あむんぜん (集英社文庫)
あむんぜん (集英社文庫) / 感想・レビュー
absinthe
笑えるお下劣コメディ。人は時として理性や品性の鎧を脱いで楽になりたくなる時がある。筒井康隆が得意としたジャンルだが今は平山夢明?雲古と小便の匂いが漂ってきそうな数珠の小品集。恐怖小説も設定が行き過ぎるとギャグになってしまうという自身の説の通り、振り切ってコメディ化した。人物たちのど底辺根性が、ダイレクトに書かれていて爽快ささえ感じられる。面白かった。
2024/09/18
キク
平山の描く世界はいつも暴力的でグロテスクで不条理に疾走していく。救いを求める淡い祈りは大抵かき消される。それでも僕は平山を読み続けている。平山の描く暴力的な世界は、確かにこの世界の一面の真実だと思うから。僕たちの生きている世界は血の匂いが漂い、不条理な暴力に溢れ、弱者からなぶられていく。その事実を思い出すために現実で毎回痛い目にあっていると身が持たない。そのことを思い出すために、僕は平山作品を読む。ただ今作はナンセンスさや不思議さが重視されていていつも以上に読む人を選ぶ作品になっている。食後には読めない。
2022/12/21
おすし
全てのボクのようなロクデナシのためにこの星はグルグルと回るんだ。そうなんだ。出所がどこか全く分からないけど元気が出てくるような励まされるような謎の満足感があるよね夢さんのお小説は。育った環境がままならない中学生男子の友情物語『あむんぜん』は長編で読みたいぐらい。『千々石ミゲルと殺し屋バイブ』サラ金に手を出したら最後ウンゲロの谷へ転がり落ち…これはウンゲロに気を取られると見失いそうになるが美しき愛の物語だ。この二編がダントツ好き。
2022/12/30
ちろ
一作目のチンパンジーの話はなんともかんとも。。でも読まされちゃう。下品が混沌としてる中に熱いものを感じてこころの中でガッツポーズを決めたり、振り回されたり。またもや愉しみました。
2022/07/28
じゅむろりん
現代日本の最底辺で生きる人々が、ちょっと上で生きている悪人に蹂躙され搾取されている様を、暴力と皮肉と小粋なジョークを絡めて編み出された短編集。リスペクトしているであろう様々な実在の人々を、冗談がすぎる名前やセリフでギャグに換えるセンスには感心してしまいます。マドンナたちのララ◯◯の替え歌や「ヲタポリス」のアイドル曲やコールは、平山氏がノリノリで歌いながら考えてますよね。絶対。唯一無二の非道なストーリーですが、どれも微かな希望や正気に戻った時の触れ合いが効いていて、油断した心にグッサリ刺さります。
2024/03/27
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