君が異端だった頃 (集英社文庫)
君が異端だった頃 (集英社文庫) / 感想・レビュー
amanon
約四年ぶりに、文庫本にて読了。改めて著者が若い頃いかに文壇の貴公子ぶりを発揮していたかということに驚かされる。何せデビューしたての青二才の作家が、当時の文壇の大御所や長老達と飲食を共にすることができたというのだから、その恩恵は計り知れない。そういうことができた最後の世代なんだろうな…と思うと、深い憧憬に駆られる。そういった多くの先達の中でも、やはり中上健次の著者に対する付き合い方には、他の人にはない愛情の深さが感じられる。その中上の死と、不倫による修羅場、そして一粒種の誕生…まさに一時代の幕開けか。
2023/06/26
そうげん(sougen)
《正直者がバカを見るこの国で本当のことをいえば、異端扱いされるだろうが、それを恐れる者は小説家とはいえない。小説、とりわけ私小説は嘘つきが正直者になれる、ほとんど唯一のジャンルなのである。》 『君が異端だった頃』、読了。ラストの330-331ページの内容がよかった。
2022/09/28
kyon
自身のデビューからこの本を書くまでの実体験について。女性関係についても、自身のことを二人称で描くことで赤裸々に綴られている。文壇の著名人のことも知れて面白く読めた(大江氏のフェチ嗜好についてもサラッと)。この本を書く上で、中上健次の死去がきっかけにもなっているようだ。失われつつある記憶をとどめておくためでもあり、同調圧力が強く、本当のことを言うのが難しい社会で、異端として生きること。それを後世へ引き継ぐため、またそれにより少しでも世論を動かすことができれば、という強い意思で書き続けるのだ、ということ。
2023/03/31
justdon'taskmewhatitwas
ちょうどこの本で書かれてる、30年位前まで、『彼岸先生』とか何冊か読んでた。それから縁遠くなっちゃったのは、”書かれてることだけ”というか、質感が乏しいというか、…イヤ、ひねくれてるのも全然好いし、本作も面白いんですけどネ。それこそ正に、文壇バーで話聞いて「へえ」とか「ほお」とか相槌打って乾きものつまんでるような読書なんだよなあ。(そんな経験ないのだけれど)
2023/04/09
十文字
かつて”文壇”というものがあった時代の青二才の青春。 中上健次との関係は著者自身が何かで書いていたか、話していたかで知ってはいたのだけど、中上から逃れるために海外に逃げたのに、なんだかんだ追いかけてくるところは、不謹慎だけど笑ってしまう。
2023/07/29
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