さいはての家 (集英社文庫)
さいはての家 (集英社文庫) / 感想・レビュー
アッシュ姉
駆け落ち、罪を犯しての逃亡、家族や恋人と距離を置きたいなど、それぞれの事情で行き詰まり逃げてきた人ばかりが入れ替わり立ち代わり入居する郊外の古い借家。小さいながらも緑豊かな庭と穏やかな住環境のさいはての家は安息の地なのか。好きな彩瀬さんの小説、大好きな公子さんの解説なので読む前からわくわく。共感、驚愕、恐怖、安堵、さまざまな感情が押し寄せてきた。やっぱり彩瀬さんは面白い。公子先生の解説はやはり絶品!
2023/04/28
tenori
読み終わって、タイトルの意味にじわっとくる感じ。地形的な最果てじゃなくて、人生のさいはて。追い詰められてはいるけれど、そこで終わりじゃない。道は途絶えるように見えて、実は続いているんだよね。そんなことを思わせてくれる、シビアだけど温もりを感じる連作短編集だった。ある一軒の古びた借家に入れ替わり住むことになる訳ありな人々の過去と現在。そして未来を予測させながら終わるところが滋味深くて上手い構成だなと思う。
2023/06/05
piro
これこれ!彩瀬さんのこういったの読みたかった!郊外に建つ築40年以上の家に纏わる連作短編集。古いけれど手入れがされた家、緑豊かな庭。何かから逃げて来た人達にとって、そこは心を落ち着ける事ができるオアシスだった…と思っていると突然おどろおどろしい「何か」が襲いかかる様に現れる。陰と陽、明と暗のコントラストが秀逸で、彼らが目を逸らしていたもの、恐れているものが容赦なく描き出されます。でもそこに絶望感は無く、小さいけれど確かな光が感じられる。解説で評される通り「残酷で容赦なく、そして優しい物語」でした。
2023/01/26
セシルの夕陽
初読み作家。5話連作短篇集。古い借家には、安住の地を求め、ワケありの人たちが移り住んでくる。家庭がある年上の常連客と駆け落ちした女。新興宗教の元教祖など。話始めは明るい兆しを感じるが、読み進めると胸がざわつき、落ち着かなくなってくる。その家には、今までフタをして直視してこなかった本来の自分を、浮き彫りにする魔物が住んでいるのかも⁈ 大家さんや、隣の高齢者ホーム、不動産屋の真っ当さと明朗さとの対比がおもしろい。南向きの明るい庭が、逃げてきた現実と向き合う光となっているように感じた。『ままごと』が1番好み♡
2023/03/27
エドワード
様々な理由で逃げる人々。飲み屋のママと常連客の不倫カップル。ヤクザの鉄砲玉が逃走に乗ったタクシーの運転手、なんと高校の同級生。信者に死なれ、逃げる新興宗教の女性教祖。マリッジブルーの姉とストーカー化した恋人から逃げる妹。単身赴任のサラリーマン。本当に色々な人生があるものだ。各々の章で彼ら彼女らが住む古い家が、徐々に実は同じ家であることがわかってくる。隣が老人ホームで、ゆすらうめの植えられた家。つまり、彼ら彼女らがこの家で暮らした日々は重ならない。この家を出た後、幸せになれたのだろうか。それが気がかりだ。
2023/04/09
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