ひとたびはポプラに臥す 3 (集英社文庫)
ひとたびはポプラに臥す 3 (集英社文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
よくこのような過酷な旅をつづけたという気がします。最後の3巻目はヤルカンドからカシュガルへと戻りパキスタンとの国境へと赴きます。途中ではかなり険しい山道を旅していることがわかります。ここで今までいた中国人との通訳とも別れます。いままで宮本さんのほかの旅行でも同行していたようですね。これだけ劣悪な環境だと5人いると関係もぎすぎすしてくると思うのですがあまりなかったようです。結構さまざまな文学や詩の話なども出てきて楽しめました。そのうちに鳩摩羅什の話を書いてくれないでしょうか?
2023/10/21
aika
旅はいよいよ桃源郷フンザとインダス河の轟音が響くチラスへ。満点の星空の下で精神病院で凄絶な最期を遂げた父の姿を思う著者の思いの深淵さに涙が込み上げました。パキスタンへ向かうため、フーミンちゃんたちとはお別れ。停電に見舞われながら毒蛇のような鰻を堪能したお別れ会は読んでていて笑いが止まりません。二匹の白い蝶と見まがえた、盲目の母とその手を引く物乞いの少女。著者一行が一瞬見かけただけに過ぎない彼女たちの歩く姿に胸をつかれたのは、一行が旅を通して人間の生命をユーモアを交えて見つめ続けていたからかもしれません。
2023/05/18
もえ
6,700キロ、約40日間のシルクロードの旅の最終巻。ヤルカンドからタクラマカン砂漠を目指し、カシュガル、タシュクルガンへ。クンジュラブ峠を落石の恐怖と戦いながら進み、パキスタンのスストの国境では、フーミンちゃんとあっけなく別れる。その後辿り着いたフンザはまさに桃源郷。地上の薔薇と天空の星に癒される。旅の終盤のガンダーラで著者は体調を崩すが、なんとか全員無事に帰路に着く。鳩摩羅什の小説を書くことを断念した著者だが、人生についての思いが沢山詰まった紀行文は完成し、27年経った今も我々の心を打つ。
2023/08/14
9分9厘
最終巻。とうとう辛く長い旅も終着地、イスラマバードへ。どんな感動が、どんなドラマが待っているのかと思っていたが、なんともあっさりと終わってしまった。ページ数にすれば1ページあったのか? 長大な旅に比べなんと簡単なことか。しかし、これが旅なんだろう。かっこよく言えば人の一生もこんな感じなのかも。死ぬときのことをあれこれドラマチックに考えて見ても所詮、本一冊にして数行のことなのだ。私も一緒に旅をした感じ。
2024/05/03
フジエ
宮本輝氏のシルクロード紀行エッセイ。1〜3巻、各章ごとに変化し続ける風景と思い。その描写の巧さに感心し、読み入ってしまう。想い巡る回想の中で登場する、著者の記憶に残る本や言葉と合わせて情景が浮かび、私個人が過去に訪ねたチベットの景色が被さる。鳩摩羅什という存在を知り、改めて、仏教やイスラム教などが行き来し、積み重なった地域・文化への関心も深まった。読んでよかったと思える一冊。
2023/10/03
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