風よ あらしよ 下 (集英社文庫)
風よ あらしよ 下 (集英社文庫) / 感想・レビュー
rico
下巻は、ダブル不倫に四角関係に刃傷沙汰というドロドロの状況で始まる。自由恋愛論は得手勝手な理屈にしか思えない。だが、野枝と大杉のくらしが始まってからは、穏やかとはとても言えないが不思議な安定感が漂う。尾行にあれこれ頼んでるあたりも微笑ましく。パートナー・家族・同志にして友人。飛び回る大杉に対し、地に足のついた思想を育くむ野枝。尋常でない生命力と方向性が合致しともに戦う、互いに唯一無二の存在として歩む二人には、覚悟はあっただろうが。何故幼い子まで。この後の暗い時代の先触れのよう。わかってはいても結末は辛い。
2023/10/21
mocha
とてもドラマチックで良い読書時間だった。日本近代史にはこれまで関心がなかったけれど、アナーキスト達の群像劇としても面白く興味深かった。それぞれの人物が一人称で語る心の内、その葛藤が伝わってくる。解説にもあるように、評伝ではこうはいかないだろう。女性の自由と自立を叫んでいた野枝が、結局は夫を支え愛に生きた姿にも矛盾を感じなかった。ラストはもちろんわかってはいたけれど、あまりにも理不尽でつらい。
2023/09/18
どぶねずみ
今年が女性活動家、伊藤野枝の没後100年にあたるらしい。彼女に関する本は2作目だが、私はなかなか彼女の生き方に共感できない。現代よりも生きづらい世だったのは確かだが、自分の主張を強めて生きたばかりに非業の死を遂げることになってしまったではないか。もちろん、十人十色なので否定するつもりはないけど、協調性も大事なんだって気づいていなかったのかな? きっと女性個人としては魅力的な方だったんだろうけど、なかなか女性活動家ってピンとこなくて理解しがたい。
2024/09/04
のびすけ
下巻は、自由恋愛を標榜する大杉栄をめぐる男女関係のゴタゴタと、栄の思想家としての活動が中心。栄たち思想家と政府の対立の中で犠牲になった野枝。強い信念を持ち、全力で駆け抜けた野枝の生涯に胸が震えた。パートナーとして栄の思想活動を支えた一方で、野枝自身の社会的な功績についてももう少しスポットを当ててほしかったかな。それとも、この野枝の生き様そのものが一番の功績だったのかな。
2024/02/18
小夜風
【所蔵】読んでいる途中で劇場公開が決まり驚いた。総合で放送してほしかったのだけど劇場に行かないと観れないのかな。下巻は昼ドラかってくらいドロドロに始まったので、村山さんだし官能小説みたいになったらどうしようと心配だったが杞憂に終わりホッとした。最初大杉栄がただのクズ男にしか思えなくてなかなか感情移入出来なかったし、アナキストや社会主義思想云々とか言われても何をした人たちなのかいまいち曖昧でピンとこなかったので、後半判り易く書かれていて自分にも何となく理解出来たように思う。野枝は生まれるのが50年早過ぎた。
2023/11/01
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