パリの砂漠、東京の蜃気楼 (集英社文庫)
パリの砂漠、東京の蜃気楼 (集英社文庫) / 感想・レビュー
夜長月🌙@新潮部
金原ひとみさんが突然、1歳と4歳の娘を連れてパリへ移住した6年間と東京へ戻ってからの生活を記したエッセイです。フランス語はおろか英語さえも話せない彼女がなぜパリに行ったのでしょう。突然、未知の国に行ったことで肉体的にも精神的にも追い詰められます。しかし、何かをしなくては死神に取り憑かれてしまうのでしょう。口ピアスもリスカ、精神病薬の乱用もその一環と思えます。ダークな内容ですが突き抜けた作家の精神性の一端に触れられたような気がしました。
2024/08/16
SOHSA
《図書館本》読中、終始身体中をそれとわからぬほど徐々に徐々に押さえつけられるような圧迫感に見舞われた。気がつくと著者の一語一語、一文一文が読み手に重くのしかかっていて、暫く身動きがとれない。金原ひとみという作家の一面がこのエッセイから生々しく伝わってきた。と同時にこの作家は、新たな何かを産み出すというよりも、自らを切り取りえぐり出すことで作品を紡いでいるかのように思えた。純文学作家という呼び名が正しいかどうかわからないが、太宰や三島などと共通する何かを金原ひとみという作家の中に見た気がした。
2024/07/07
olive
子供時代は、最も生きづらい時代だった。ただ苦しいだけの日々が永遠続いていた。楽しかったと思える日は一年の中で七日くらいしかなかった(本文より)「生きづらさ」の原点が書かれていた金原さんのエッセイ。死なないために、小説を書き、音楽を聴き、恋愛する、ことで生きている姿が赤裸々に語られいる。友達とかの話は「アタラクシア」を読んでるようだった。エッセイだけど小説のような一冊。
2023/12/24
tenori
金原ひとみさんのエッセイ集。彼女は小説の中でしか自分をさらけ出せないと言う。それが本当ならば、読者は彼女の作品を通して金原ひとみの生きざまを肯定しているということだ。彼女の小説は浮き沈みが激しく、読後の疲労感は半端ではない。ゆえに当たり前に読者を選ぶ。それでも熱量に圧倒され引き寄せられるのは、小説が彼女そのものだからなのだ。このエッセイも美しいものではないし、危うい人だなと改めて思うが、文豪とは旧来面倒くさい生きものなのである。
2024/07/28
ゆきらぱ
洗練されているのにどっしり地に足がついている文章。その上読んでいる私の力まで引っ張ってくれているのか(この気持ちわかるわかる)(行ったことのないパリの空気も感じられる)となんだまだ集中して読書出来るじゃないかと自分の能力を引き出してもらったような気分になった。恋愛至上主義とは書いてあるが恋愛に依存しない金原さん。何にも依存していない。書くことにも家族にも。ただ湧き上がってきているような。それがほんと読んでいて救われる。娘さん2人の様子が可愛い。夫もどこにも良いところは書いてないけれど良い人とわかってしまう
2023/05/05
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