美ら海、血の海 (集英社文庫)
美ら海、血の海 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
空からはグラマンによる機銃掃射。そして海からは圧倒的なまでの数の艦船による艦砲射撃。そうした徹底した掃討作戦の後に陸戦隊による火炎放射器と機銃、手榴弾による殲滅。沖縄戦で米軍がとった戦術だが、それはヴェトナムでも中東でも変わらずに取られ続けている。圧倒的な物量を背景とした米軍の常套的な作戦である。一方、皇軍はもはや主力を欠き、事実上は壊滅状態であった。しかも、沖縄の民間人を犠牲にしつつ軍人が助かろうとするのである。壕も食料も奪い、時には同胞の民間人にまで銃を向けて。あの戦争はなんだったのか、を⇒
2019/06/24
いつでも母さん
『隠してはだめだ。逃げてはだめだ。これがおまえたちの生きている世界だ、死者たちの呪詛が刻まれた血まみれの大地の上でおまえたちはいきていくのだ。』嗚呼、全世界の偉い人達に聞かせたい。『ぼくたちの美しかった島は血で塗りつぶされた。』沖縄を生贄にした日本よ。今また市井に生きる者達にどんな業を背負わせるのかー東北の震災直後の様をかつての沖縄戦にだぶらせる幸甚、だがその姿は前を向いている。明日を向いて行く。まだ戦後が終わっていないと云わせる馳星周!渾身の作品ではないだろうか。池上さんの解説も良かった。お薦めです。
2016/10/14
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
また読んでしまった、戦争もの。やっぱ、沖縄戦は辛いな。何のために戦ったのか。何のために散っていったのか。その問い自体が虚しい。長い歴史から見れば一瞬の出来事であったのかもしれない。南国の紺碧の海を血の色に染めた惨劇も、すぐに真夏の月と溢れるような星々を映した元の美しい海原へと還っていった。でも、うちなーんちゅの戦後はまだ終わっていないのかもしれない。ノワール色全開の不夜城の印象が強い馳さんだが、違った面も覗くことができて、ちょっと良かったかも。
2020/06/21
hit4papa
東日本大震災を目の当たりにした老人が想いを馳せるのは戦時下の沖縄。老人が14歳の頃の苛酷な日々がつづられます。米軍が上陸し、苛烈な攻撃で人々は、命をおとしていきます。一寸先は闇の中、エゴを剥き出し、生き残ろうと足掻く大人たち。少年は、この世の地獄を彷徨い続けます。震災と戦争はシチュエーションとしては違うものですが、大いなる力の前の無力な人間の姿は相通じるものがありますね。タイトルからはノワールを予想しましたが、著者の”じゃない方”の作品でした。戦争の悲劇は読み取れますが、感動とまではいかず...。
2021/05/18
ゆいまある
東北の震災に遭遇した高齢者が、その地獄絵図から沖縄の地上戦を思い出し、回想シーンで進む。生き残った少年。同じく生き残った少女とたった二人になり恋をする悲しくも美しい話。ありきたりで記憶に残らない(8月によくありそうな。読み手の感性が麻痺してる)。本土から来た軍人には沖縄人と言われ殴られ奪われ殺され、敗戦してもそのことを知らずに死に続ける。米軍はそんな彼らを生きたまま火炎放射器で焼く。世の中色んな地獄があるけど、子供がお腹いっぱい食べられない地獄が一番嫌だ。馳さん、海で体洗ったら余計にべたべたしますよ。
2020/08/15
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