水の透視画法 (集英社文庫)
水の透視画法 (集英社文庫) / 感想・レビュー
yumiha
かつて世界を飛び回っておられたのに、脳出血で右手右脚がマヒしてしまったそうな。「台上の心得」や横断歩道を渡り切らないうちに赤になる信号は、私も経験済み。プレカリアートや〈断念の沼〉は、今の世の中を捉える視点として、示唆をいただいた。また、その視点に立ったうえで石原吉郎の「ことばから見放される」という引用も、ズキッときた。ビンラディンのオーデコロンや北京五輪のスタジアムは、驚かされた。最後の3.11のページは、ドキドキして読んだ。ただ読み飛ばせない話が続くのでしんどくなり、途中で気分を換えながら読み続けた。
2016/08/24
reading
初読み。骨太で格調高い文章は高村薫氏を彷彿とさせる。 少し難解な部分もあるが、他の作品も読んでみたい。
2018/01/20
魚53
繰り返し読む。描写の素晴らしさ。「一人ひとりの孤独に届くように書いた」とあったが、その通りで、私は深い井戸の底に落ちたようにこの文章を読んだ。というより聴いた。暗い井戸の側面か、底か上か、どこかから響いてくるような声を聴き逃がすまいとして。
2023/04/03
ジョンとらぼるた
「殺すくらゐ 何でもない/と思ひつつ人ごみの中を/闊歩して行く」(P47)夢野久作…ぶっ飛ばされ「こづいている子は、ときどき私をふりかえり、あどけない顔で笑った。」(P20)辺見庸…震えた。子どもの「無邪気な悪」に怖れおののく。この子は大人からは「良い子」として通ってるのではないか、こづかれている子はどんな心境なのか、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の宍戸修と眼鏡の優等生を思い出したり、ともかくこの一文に出逢ってからごちゃごちゃ思考が頭の小宇宙を駆け巡った。他にもこの本の中には日常の非日常が散りばめられている
2013/12/28
繻子
一区切り読めば気持ちが落ち着く。本当にただの好みの話で、辺見庸の言葉のセンスが好きだ。滲んだような風景を眼で追ったままなように描き、時折色を差すものが、具体的な季節の花、蝶、動物の色、枯れ葉で、本人のやや偏った思考を書き連ねているのに、文章はやさしく描写を重ねている。電車に光が満ちる場面など、読んでいて恍惚とする。ちょっとセンチメンタルすぎるところが、また良いです。
2013/10/01
感想・レビューをもっと見る