賞の柩 (集英社文庫)
賞の柩 (集英社文庫) / 感想・レビュー
mocha
ノーベル賞を受賞した英国医学界の重鎮。心血を注いだ研究を横取りされ、家族も将来も失った研究者。功績を残しながらも志半ばでなくなった学者たち…福岡、ロンドン、パリ、バルセロナ、ブダペスト。ミステリーは世界を揺るがす事件に発展するのか?謎解きよりも、ヨーロッパの美しい情景や、登場人物の背景の作り込みがうまいと思った。小保方さんの事件や原発事故までも想起させる話だが、1996年の作品。
2015/10/08
ehirano1
ノーベル賞のダークサイドは福岡伸一さんが新書などでチィチョイ書いていますが、一つの小説として纏まったのを読んだのはこれが初でした。出口(=最終目標)が『ポジション』と『名誉』になってしまうと、本書のようになってしまうのは寧ろ必然、いやいや内在的理論でさえあるのかもしれなと思いました。
2019/10/06
nobby
疑われぬ権威であるノーベル医学・生理学賞をめぐる不審を暴くというテーマに興味のわいた作品。日本・ロンドン・バルセロナ・パリを舞台に描かれる4人が、途中から絡み合っていく様子は面白い。ただ中盤ちょっと長く中だるみを感じた。結果的にはほぼ予測通りな展開は少し退屈だが、人物の思惑や背景の描写は丁寧なので読みやすい。その悪者本人に全く悪気な素振りが見えない所だけ違和感…こういった受賞をめぐる疑惑、実際にもありそうだが、ノーベル賞を取り上げたことが勝因に感じる。
2015/09/22
のぶ
ノーベル賞をテーマにした医療サスペンス。アーサー・ヒルというイギリスの医師がノーベル賞を受賞するところから物語は始まる。主人公の医師、津田は同じ分野で研究を続けながら世を去った恩師、清原の死因を探るなかで、アーサーの周辺に不審な死が多いことに気付く。中盤はパリに絵の勉強に来ている清原の娘、紀子と津田のロマンスが描かれるが、ストーリーの流れが停滞しやや退屈。終盤に入り、ある事件が発生し再び物語は動き出す。やや短めなのが不満ながら、医学界の功績やノーベル賞の権威が良く出ていた面白い一冊だった。
2019/08/04
きさらぎ
ノーベル賞を題材にしたサスペンス。前半やけに長く感じられたけど結末は駆け足で…。ただ間に挿入されたヨーロッパの情景が素敵。帚木作品は「閉鎖病棟」に続き2作目だけど、東大仏文科卒→九大医学部って、文系理系関係なくオールマイティに頭がいいってこと!?ペンネームは源氏物語からとってるっていうし…。ミステリアスな人だなぁ(笑) 古い作品だからか、文章的にはイマイチ合わないと感じた。でも、意外にノーベル賞の歴史の中に、こういったことが埋もれてたりするのかも?と想像をめぐらせたりして面白かった。
2015/12/13
感想・レビューをもっと見る