白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)
白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫) / 感想・レビュー
れみ
とある地方の町で起こった殺人事件。周辺の人々の話から容疑者として浮かび上がった人物がいて…というお話。もっと暗いドロドロしたものを想像していたわりにインタビューやSNSの文章で構成されている部分が多いせいかサクサク読めた。だけど、人の話や感じ方がいかに曖昧で不確実で時に大げさになってしまうのか…ということは怖く感じた。
2014/04/06
またおやぢ
作中に登場する雑誌記者、並びにSNSはきっと魔法の鏡なのだろう。登場人物はそれらの魔法の鏡を使い出来事や想像を”本当の事”として思い込む。情報が他者に共有され、他者からの共感をうけ、その思い込みは加速する。思い込みにより生み出された”悪意”という名の毒リンゴを食べ、真実に蓋をする事を選択した者達が本当の「白雪姫」という事か?であるとしたならば、真実を取り戻す王子はどこにいるのか?…何とも救われない話であるが、作者が意図しているならばそれはそれで興味深い一冊。
2014/05/03
kishikan
湊さんの本はそんなに多く読んでいないので、なんとも言えませんが、人との関係性をえぐるのが上手というか鋭いと思います。よく事件があると、容疑者や被害者のことを、ご近所の人や会社の同僚は「そんな人には見えなかったとか、良い人でした」となるのですが、実はそうは思ってなくて、匿名になると違う答えをする。マスコミも、決して嘘は伝えないし事実のみを伝えるけれど、その事実が真実であるかどうかまでは重視しない。こうした問題にSNSの問題も上乗せし、殺人事件の真相を追う問題作。附属の関連資料集に読者向け犯人探しのヒント有。
2015/12/19
にいにい
久々の湊かなえさん。今回「殺人事件」というタイトル湊さんらしくないなと思いながら手に取った。内容、構成は面白い。特に、SNSや週刊誌や新聞報道を資料として巻末に入れるのもいい。欲を言えば、各章の直後に分割掲載した方が読みやすい。内容的には、学校、職場、SNSという区切られた場で、「人を貶めておもしろがってる」陰湿な人の存在、その心が当人にも跳ね返ることを痛感させられた。SNSが便利になると比例して不信感と孤立感も増す。人と人との関わりの在り方を再考させられた。人の嫌な面を明らかにし、問いかける一冊。
2014/02/27
さてさて
私達は、人が語りや文章によってその内面から発信した情報の洪水の中に生きています。そんな情報の洪水の中から”真実”を見つけ出すことは容易ではありません。そんな情報の洪水の中から”真実”に行き着くことの難しさを思い知らさせてくれるのがこの作品。違和感なくすっと納得できるその結末が故に、結末に行き着くまでの情報の洪水が如何に馬鹿馬鹿しいものか、人の言うことが、書くことが、如何に当てにならないものなのかを改めて思い知らせてくれたこの作品。湊さんの構成力の巧みさ、上手さに改めて感服してしまった素晴らしい作品でした。
2021/07/31
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