我が家の問題 (集英社文庫)
我が家の問題 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
6つの短篇を収録。タイトルは「我が家の問題」だが、内実は夫婦の問題、というか、様々な夫婦のあり様を描いたもの。この作者にしては、概ねシリアスな筆致で語られる。解説の吉田伸子は「これからお父さんを救出してきます」を最も印象的な言葉遣いとしてあげているが、私は同じ「夫とUFO」の「いざとなれば、何をしたって生きていける。妻はそのための存在ではないのか」を挙げたい。6篇はいずれも形は違えど「友だち夫婦」である。みんなそれぞれに幸せなのだが、それでも「絵里のエイプリル」を混入させておくのは、この作家らしいところ。
2019/09/16
Yunemo
どこの家にもある問題なんでしょう。でも外からは垣間見ることはできません。隣の芝生じゃないけれど、自身以外の家庭、家族は良く見えます。自身の持つ悩みは、たぶんそれぞれに持っているのでしょう。逆にちっぽけなことかもしれません。なんだかこれら6つの家庭事情、申し訳ありませんが、ひとつひとつ仄々として、いいなぁという感じで受け止めてしまいます。本当はそれどころじゃないのでしょうが。外から、夫婦から、子供から、兄弟から、それぞれの目線で見ると、それぞれに違った見方になる、なんだか今になって再確認、そんな感じで読了。
2014/07/21
にいにい
奥田英朗さんの6篇の短編集。全て、普通の家族間で生まれる課題を扱っている。さすが、奥田さんの短編はいいなぁ。何処の家族でも起こりそうなテーマで、我が家では、こうだと比較しながら読めるのが良かった。「夫とUFO」と「妻とマラソン」が夫婦の思いやりが心地よい。特に、「ハズバンド」のめぐみさんのお弁当が心に残った。秀一は、社内の仕事面で本当のところどうなっているんだろう?晴れない疑問も楽しめた。一読して、家族を振り返ってみるのに参考の一冊。
2014/09/11
たかしくん。
トルストイの「アンナカレーニナ」の有名な出だしを捩れば、「幸福そうにみえる家庭にも、それぞれに異なった悩みをかかえている。」となるのでしょうか? どの話も、あるある、と苦笑いをしながらもうなずけるものでした。そして、どの「我が家」もその悩みを正面から受け止めて前向きに行動する姿に、ほっこりしながらもウルッと来る場面もあり…。 印象に残ったフレーズは、「夫とUFO」の中での「解答はない。家族にはマニュアルがないのだ。」成る程その通り、でもこれまで思いつかなかった言葉でした。
2014/07/30
おかむー
『よくできました』。『家日和』と今作、さらにもう一冊出れば『家』シリーズだね、ぜひ次巻にも期待したい。それぞれの家族の「大」問題でなく「中~小」だけれど描き方によっては陰鬱な方向に行きかねない問題が、おだやかにどこかクスリとするコミカルな作風で描かれる六つの短編集。どの作品も予想を覆す展開はなく、原稿用紙数枚分のラストの描写を描いてない感触が特徴的。五話目までで感情を揺さぶられる展開はないものと気を抜いていたら六話目『妻とマラソン』のラストで目頭を熱くさせられたぜこんちくしょう(笑)
2014/07/20
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