そこへ行くな (集英社文庫)
そこへ行くな (集英社文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
そっちに行ったら傷つくってわかってても引き込まれちゃうのが人間...というような短編集。やっと物語に慣れたと思ったら次の作品、みたいな流れでなかなか入り込めず、慌ただしく読了。
2017/05/10
ケイ
7つの短編のうち最初の「遊園地」だけに、そこへは行くなというタイトルの言葉が響きこだました。行ってしまう、言ってしまう。知りたくないことを知る恐怖も、このまま中途半端に幸せでいようとする焦燥に勝ってしまう…。それでもわたしもこの男に惚れてしまうだろう。その後の5つは、読んでいてイヤ〜な感じがした。そうさせる作者の筆。最後の「病院」はとても好きだ。ツラいが、どこか前向きにさせる父と母の言葉が、暗いところに少年を引きずりこまない。1つの光が消えていったのだとしても、クリスマスの贈り物があったように感じられた。
2017/05/24
優愛
曖昧な終着点に流れる微かな恐怖と妖しげな感情。愛しているから追いかけてしまう。行ってはいけないと分かっていながら、知ってはいけないと分かっていながら真実というその場所へ――。本当は"このまま"で良かった。今のままで良かったのに。私達人間はどうしたってその陰に手を伸ばしてしまうんだ。裏切りは痛くて、苦しくて。だけど気づかない振りが出来なかった自分をどうか責めないで。最後を放り出された感が正直否めないですがこれが逆に良さを出しているのかなとも思えます。機会があれば長編も読んでみたいと思えた作家さんでした。
2015/07/18
めろんラブ
タイトルからしてそそられる。”そこ”へ行ったがために、日常が暗転してしまう登場人物。成り行きなのか、運命なのか。いずれにしても、本来、安穏とした暮らしなどはどこにもなくて、私たちは霞がかった桃源郷を、思考を止めて妄信したいだけなのかもしれないと戦慄させられた。不穏さが漂うなかに、男女の機微をリアルに織り交ぜて、飽くことなく読了。ところで、タイトルの「そこへ行くな」、とは一体誰の言葉なのか。もちろん作者である井上さんのものではあるが、登場人物の顛末を握る立場の作家による、神の視点のなせる技なのかもしれない。
2016/01/27
おくちゃん🍎柳緑花紅
タイトルがなんといっても秀逸。最初から最後まで不穏な空気、心がザワザワ。気付いていても気付かないことにしてしまおうする私の中の私。口に出してしまいたいけど、ぐっと飲み込む気持ちや言葉。見てはいけない、行ってはいけない、そこについ・・・・最後の「病院」は身近に同じように病気を抱えている友人とその家族がいるので、引き込まれつつ胸が痛んだ。井上荒野さんの作品に目が離せない。
2015/07/02
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