朱鳥の陵 (集英社文庫)
朱鳥の陵 (集英社文庫) / 感想・レビュー
Yuna Ioki☆
977-180-22 想像でしかありえない世界ではあるけれど、当時の権力争いでは暗殺なども当たり前であったのかもしれないと思えてしまう。いつの世にも身分の高い人程数多の試練やストレスをうけ、身の危険に晒されているのだろうなあ。改めて史実と持統天皇、稗田阿礼について調べたくなった。
2015/05/10
エドワード
百人一首「春過ぎて夏来たるらし白妙の」で知られる持統天皇の、その優雅な姫姿とは全く異なる激しい心。慈悲深く政を執り行う姿の裏に隠された真の心を、その名も白妙という、夢解女が解いていく。坂東眞砂子さんには珍しい、古代の女帝を主人公とした物語。父・天智天皇と夫・天武天皇の信頼と相克、息子・草壁親王を守りぬく母の執念、額田王はじめ天武の他の妃への嫉妬心がすさまじい。朱鳥<あかみどり>とは、鴆。仙薬にして毒。藤原京を舞台に、古事記や<すめらみこと>の称号の誕生の謎を加えて描く。古代史ロマンを堪能できます。
2015/03/02
豆乳くま
春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣干したり 天の香具山 この歌を今までのように聞けなくなります。恐ろしい。持統天皇と常陸の国から呼ばれた夢解売の白妙、この二人が主人公の飛鳥時代のこの話は私には不勉強な分野ではあるが強力に引き込まれた。持統天皇なんて、神話なのか実在なのか、古の時間の中に血で血を洗う高御座を巡る闘いの記憶を追体験する事になった白妙。額田王に「逃げなさい、天皇に気付かれる前に」からドキドキハラハラしだしました。吉野への御幸は二人の距離が近すぎて目眩すら感じました。そして最期はやはり絡め取られて
2015/02/23
アルピニア
歴史小説であり、サイコサスペンス。主人公の白妙は、夢解売(ゆめときめ)として京に連れてこられる。そして時の女帝(持統天皇)の心に引きずり込まれ、彼女の秘密を知る。15章構成。天皇の座をめぐる陰謀が章を追って明らかになり、じわじわと緊張が増す。そして13章で一挙に恐怖が迫り、最後を迎える。持統天皇の嫉妬、野望がすさまじい。白妙の無意識に潜む願望も。古代日本の宗教、風俗にはとても惹かれる。生活に神と魑魅(おに)が、言葉に霊力が存在する世界。歌は呪い(まじない)。今後あの歌を聴くたびにゾワっと鳥肌が立つだろう。
2016/04/14
うめ
下手なホラーの数十倍怖い。最終章は近年稀に見る恐ろしさ。ああ、あの歌のイメージが変わってしまうぅ。けれども、美しい日本語、素敵な名前、鮮やかな描写に引き込まれる。美しい言葉を口に載せ、人や世界を言祝ぐ事は、すごく魅力的で真似したいし。この心地よい古語の響きに酔いしれていたくなる。この本はこわいけれど。身体を男性に充たされることで、心の充足も得られる女という性は、時に哀しい。
2015/12/18
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