北斗 ある殺人者の回心 (集英社文庫)
北斗 ある殺人者の回心 (集英社文庫) / 感想・レビュー
nobby
何とも胸が締め付けられるばかりで読了。幼少時からの虐待の様子をひたすら本人目線での描写はグロく生々しく、眉をひそめて度々空を見上げた。何より北斗がその要因を自らの非に探したり、「あの男の遺伝子だけは残してはいけない…」と自制するのが不憫でたまらない。ようやく見つけた休息の場も長く続かず、理不尽が重なって悲劇に向かうのは分かっていても切ない。まず“生きる”“愛する”当たり前に感じ得ている自分に感謝。「ただ抱きしめて欲しかった…」どれだけ哀しい渇望なのか…
2016/05/11
takaC
あまり目にしない言葉だなと思いながら読んだが、これが「回心(かいしん)」なのね。振り返ってみると実はただ長いだけの話だったような気もする。
2017/04/27
あすなろ
裁判長に北斗は感じた。大人が自分を受け入れてくれることへの驚きを。そんな想像及ばぬ北斗が描かれた580頁超の力作を、北斗若しくは北斗への第三者観から一緒に悩み抜いた作品。感想は一杯ある。書き連ねられない。僕は無力で手段を持ち得ないので、少なくとも今は愛息を抱きしめて受け入れて守ってあげることしか出来ないのである。また、解説のとおり、石田氏の法律小説として、描写が新鮮で、かつ、心理描写と投写が心理と真理に迫る作品である。この手の作品が石田氏作品に連なっていることも驚き。青少年描写に長けている石田氏ならではか
2017/04/09
のり
衝撃が強すぎる。あまりにも凄惨な生い立ち。両親からの過激な虐待。庇護するべき存在のはずが…「北斗」の安らげる時や場はどこにもない。年端もいかない子が身を守る術はない。生地獄の終焉は父親の死が境となり、児童相談所経由で里親の「綾子」との出会いで初めて人の情に触れる。やっと幸せな生活を送れるようになった矢先に…病で余命を宣告された綾子を懸命に支えた北斗。そして「波洞水」絡みで破滅の道を進む事に…里親を喪った北斗は自暴自棄になり、悲惨な事件を起こす事に…その後の裁判の心理描写が心を揺さぶる。
2019/01/17
miww
冒頭から容赦ない虐待の描写に胸が痛む。そしてその痛みを最後まで抱いたまま読み終えた。壮絶な虐待、里親と出会って得た安息、それを失った為に道を踏み外す北斗。感情を封じ込め生きるしか術がなかった彼が、自分の本当の気持ちと向き合い葛藤する裁判の場面は圧巻。「僕はただ抱き締めて欲しかった‥お母さんに愛されたかった‥ぎゅっと抱き締めてお前が好きだと言って欲しかった‥」被害者家族に謝罪し、自分の気持ちを吐き出す北斗に号泣。彼の罪は許されないのに、最後は寄り添っている自分がいました。読んでみて下さい。
2017/05/03
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