白仏 (集英社文庫)
白仏 (集英社文庫) / 感想・レビュー
chantal(シャンタール)
筑後川に浮かぶ中洲のような大野島で、明治、大正、昭和を生きた「鉄砲屋稔」の生涯。刀鍛冶だった家は時代の流れと共に鉄砲の修理へと移り変わる。人を殺すための武器を扱う仕事をして来た彼はずっと死について考えて来た。初めて本当の死を理解したのはシベリア出兵での経験。それでも鉄砲屋稼業は戦後まで続く。子供の頃から死を意識する度に現れた「白仏」を晩年建立する事を思い立ったのも、彼が最後に行き着いた、究極の「死後の世界」なのかもしれない。作者の祖父がモデルだそうだ。明治以降の日本が歩んだ茨の道になんだか胸が詰まった。
2020/08/29
bluelotus
★★★☆☆ 終始生と死、命について語られた小説だと思っていたが、フェミナ賞では純愛と捉えられていたのね!?と解説を読んで驚いた(笑)
2023/03/14
シン
B評価。 面白かった。久々に死生観について考えた。 「死がこのように絶望の匂いに満たされているのなら、人間はなぜ生まれてこなければならなかったのか」
2017/01/15
dynabook77
19世紀終わり筑後川下流の大野島に生まれた稔さん。 「生と死」に自問し実感する、発明に力を注ぎ家族を思う、稔さんの生涯。 「いつかは死ぬったいね。」 思い悩み精一杯生きていく様がとても心に響く良い作品でした。
2022/02/05
topo
作者の祖父がモデル。島民の遺骨で仏像を造る。その心とは。仔細な時代背景、人物像や文化の緻密な描写は作者の既読作品とはまた違った荘厳な雰囲気。哲学的でありながら美しい。 死は敗北ではない。生と死は対称的な存在ではなく、同類。いつか白仏に会いに大野島を訪れたい。
2017/05/26
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