友罪 (集英社文庫)
友罪 (集英社文庫) / 感想・レビュー
W-G
先に読んだ二冊と比べても、段違いに面白い。面白いという表現さえ不謹慎呼ばわりされそうな内容。にも関わらず敢えて"面白い"という表現。解説のとおり、鈴木の内面描写は一切ないが、要所要所で作者が読者に見せたい"鈴木像"への誘導はしっかり為されており、益田や弥生が肝心な時に限って、やたら軽率な行動に出ることまで、結局、人工的な"小説世界"。しかし、その中で、圧倒的な品質と呼べる織り込み。「なんと言っていいかわからない」「感想が思い浮かばない」というレビューの多さが勲章がわり。『Aではない君と』も読もう。
2018/07/01
nobby
自分の周囲に凶悪または破廉恥な“過去”があることを知った時、どう対するのか。夢中で読んだ後も答えなど出せそうにない。中盤からはもう崩れていく展開が分かりやすく切なく胸いっぱい。“罪を背負って生きる”難しさ。被害者の立場からすれば生きているだけでも憎いであろう。でも生きるに当たっては喜ぶ場面もあるだろう。それでも更生されたとする犯罪者を自分がどこまで受け入れられるのか、一言では片付けられない…こんな重いテーマでの600頁を一気に読ませる薬丸作品さすがだ。
2015/12/13
トンちゃん
親友がが猟奇殺人犯だったら…という視点で描かれている小説。読者はどうしても酒鬼薔薇事件を思い浮かべてしまうでしょう。少年Aとしての鈴木のような性格であれば私なら親友であり続けるかもしれない。でも、現実的な反応は主人公たちのように距離を置こうとするのでしょう。 過去はどうやっても正当化できません。 作中に出てくる山内の息子の事件との対比が面白いなと。親友の過去に故意犯か過失犯のどちらかの事件があったとして、過失犯なら許されるのか…。もし、真摯に反省しているのなら許しわしなくても親友でいても良いのでは。
2020/05/19
hit4papa
少年の頃に猟奇殺人を犯した過去を持つ、青年の物語です。いわゆる少年Aのその後を描いた作品で、彼が友と信じた同い年の青年との関係性が主軸です。人は自分の知人が殺人犯と知った時、どのような思いに囚われるのか。友情を、そして愛情を、それを知る以前と同様に持ち続けていくことができるのか。本作品は、著者がよく取り上げる少年犯罪や加害者の心の内をテーマとしています。消せない過去を持っていても、人は前を向いて歩いていく術はある。本作品は、こういうメッセージが込められていると思うのです。「友罪」は、良いタイトルだなぁ。
2020/04/28
こーた
人は誰しも、触れられたくない過去というものを抱えて生きている。忌まわしい過去は隠したままにしておきたい。そうおもっている反面、一方では誰かに話を聞いてほしい、過去を洗いざらい打ち明けてしまいたい、という想いをいだいていたりもする。わたしは聞き役であるはずだった。なのにひとの大いなる過去と対峙したとき、思い出されるのはわたし自身の過去であった。相手の過去を暴こうとするあまり、木乃伊取りになって自分の過去が襲いかかってくる。ひとの物語を聞きながら、自分の過去に想いを馳せる。小説を読むのも似たようなものである。
2018/06/14
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