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糸車 (集英社文庫)

糸車 (集英社文庫)

糸車 (集英社文庫)

作家
宇江佐真理
出版社
集英社
発売日
2016-01-20
ISBN
9784087454024
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糸車 (集英社文庫) / 感想・レビュー

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ミカママ

宇江佐さんの中でもベスト◯に入る作品に出会ってしまった。主人公は蝦夷松前出身・元武家の妻、お絹。家老職の夫を亡くし、一人息子までも同時に行方知れず。息子を探しに、慣れぬお江戸で行商を始めた彼女だが…。親友・お君との別れでは、わたしも過去に訪れた三ノ輪の浄閑寺がくっきりまぶたに浮かんだ。ラストについては賛否が分かれるところだが、わたしにはよくわかるし、同じ道を歩いたと思う。それが時代だったのだし、お絹の強さだったのだ。ご自身の出身地を絡ませたあたり、宇江佐さんはお絹にご自分を投影されたのだろうな。

2020/06/16

じいじ

何ともいえない心地よい余韻の残る読後感に浸っています。江戸・深川の裏長屋で独り暮らしをする武家女房お絹を主人公にした『糸車』。大人の恋情と下町の人情描いた物語、しっとりと味わいました。宇江佐作品の大好きな一冊になりました。なんといっても、凛としたなかに優しさをもつお絹のキャラがいいです。魅かれます。著者は気丈なお絹の心うち、心情の変化を実に細やかに見事に書き上げています。そのお絹に密かに思いを寄せる町方同心の本心が垣間見えるのが面白い。いつか二人の恋の成就を期待していたが…。その恋の行方は…???

2016/10/07

新地学@児童書病発動中

松前藩の家老の妻お絹は、江戸で行商をしながら息子を探し、下町のさまざまな人達と交流を深めていく。宇江佐さんの良さが凝縮された素晴らしい連作長編。しみじみとした情感が胸の中に広がっていく。おせっかいながら涙もろくて、困った人を見ると助けずにはいられない主人公のお絹が、忘れがたい印象を残す。登場人たちは苦しみや悲しみを抱えて生きており、そんな人たちに向ける宇江佐さんの眼差しは、限りなく優しい。結末は悲しいが、お絹の控えめな恋がわずかな間だけでも報われたことは良かったと思う。

2016/07/03

のり

松前藩家老の夫が藩の不穏な動きに巻き込まれ殺害される。12歳の息子「勇馬」が消息不明になる。息子を探す為に、小間物の行商人に身を落とした「お絹」。行商にも手を抜かない姿勢が常連客をつかむようになり、長屋生活にも馴れてくる。信頼関係も深まり、心許せる人達も…子を想う母の深い愛情と、憔悴感が重くのしかかる。藩への不信も募るばかり…同心の持田との関係も切なすぎる。

2018/06/20

ふじさん

再々読。宇右衛門店で小間物の行商で身を立てているお絹は、松前藩の家老の妻だった。その夫は藩内の不穏分子に殺され、行方不明となった息子の勇馬を探すために深川に出て来たお絹。慣れない行商を通じて、同心の持田、茶酌女、船宿の女将等と親交を深める中で、船宿の不良娘と質屋のドラ息子の恋騒動、茶酌娘と元恋人の悲しい恋の顛末等、様々な問題に巻き込まれる。そこには、その悩みに共感し解決に奔走する心優しいお絹がいる。更には、お絹自身に関わる静かな恋模様も読みどころ。母親として、女として、一つの願いを胸に生きる姿がいい。

2024/10/21

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