カテリーナの旅支度 イタリア 二十の追想 (集英社文庫)
カテリーナの旅支度 イタリア 二十の追想 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
まずタイトルがいい。20からなる断章の最後の1篇からとられているのだが、なんとも旅心を誘われる。もっとも、この1篇はそのような浮き立つものではなく、寂しさの極みなのだが。20篇からなるので、一つ一つは短いが、それぞれにイタリアのエッセンスがぎっしりと詰まっている。著者の目は常に冷静でありながらも暖かい。彼女の学生時代にこんな本があったなら(なにしろ当時は東京にイタリア料理店が2件しかなかったそうだ)、内田洋子氏は狂喜乱舞しつつ同時に切歯扼腕したことだろう。それほど本書はイタリアとイタリア人とを語っている。
2018/11/21
KAZOO
内田さんのエッセイですが、どれひとつとってもミニ小説のような趣があふれています。いわゆる観光地でない場所でかの地に住む人びととの交情を描いています。40年もイタリアにすみ続けているからこそ書ける文章だと思いました。須賀さんや塩野さんとはまた違った観点からのエッセイです。楽しめました。
2019/12/11
のぶ
ミラノを中心にしたイタリアの人たちとのふれあいを綴ったエッセイ集なのだが、この著者のエッセイを「ジーノの家」「ミラノの太陽、シチリアの月」と読んできて、よくイタリアでもミラノは冷たい感じがする、と言う印象をよく耳にする。この3冊を通してミラノのその特徴が良く分かった気がする。ミラノの人は決して冷たくなくむしろ温かい。そのあたりの違いがしっかり書き分けられている、そんな優れたエッセイだった。自分も一度だけイタリアに行ったことがあるが、ミラノには行っていない。機会があればぜひ訪れて感じ取ってみたい。
2017/03/29
こばまり
粋だナァ、大人だナァ、人生だナァと羨望と共に溜め息交じりで読む氏のエッセイだが、今作はカカオ75%を優に超えるほろ苦さであった。人生ってなかなかうまくいかないのね。そしてそれに気付くのは年老いた頃なのねと。いつもは旅心だが今回は里心がついてしまった。
2016/05/26
ユメ
内田洋子さんのエッセイに夢中である。内田さんの文章は、くっきりと鮮やかな画を読み手に焼きつける。サルデーニャ島を走る真っ赤なフェラーリ、黒いビキニで日光浴をする女性、広場に面した六角形の部屋、修道院へ持って行く小箱のような鞄。そして内田さんは、印象的な光景や物に託して、そこに宿るイタリア人のドラマを語る。そのひとつひとつが色濃く、忘れえないものとなるのだ。愛もあれば孤独もある。異国での出来事であるから尚更なのだろうか、感情が心の襞に沁みる。肺にしん、とイタリアの空気が流れこんでくるような気がしてしまう。
2017/11/15
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