手のひらの砂漠 (集英社文庫)
手のひらの砂漠 (集英社文庫) / 感想・レビュー
りゅう☆
愛し合って結婚したのに、ある日夫からDVがエスカレート。命からがら逃げ出した可穂子はシェルターへ。社会復帰しようにもつきまとう夫の影とPTSD。やがて女性だけのファームで暮らすことに。裕ママを始め、ツライ思いをして逃げてきた女性たちだからこそお互いの思いが分かる。そこでの由樹の存在が腹立たしい。そしてベーカリーで働きパン作りに精を出し、伊原父娘と出会い順調にいくかなと思った矢先、元夫の存在が、やり方が卑劣で怒り心頭。これから一生この男に振り回され、脅され、逃げ回る人生って思うと殺意も抱いてしまうと思う。→
2017/11/18
miww
とにかく怖い。酷いDVを受け裸足で逃げ出し、やっとの思いで離婚した可穂子にその後も執拗につきまとう夫。相手が暴力を振るう人間かどうかなんて本性を出すまでわからないし、運が悪いとしか言いようがない。それでこの状況は余りにも理不尽。「自制心が欠落し、自尊心のために、更に相手に執着してしまう。思考の構造が全く違う人間」とまともな話が出来るはずもなく絶望的な気分になる。その展開と凄い臨場感で読み出したらとまらかった。ラストの夫との決着は否定しない。伊原との結末も含め、終わり方はよかった。
2016/10/04
優希
終始恐ろしさがつきまとっていました。夫・雄二からのDV被害に遭う可穂子。離婚を経て自立しようとしてもDVで受けた傷というのはずっと刻みつけられているものなのだなと思うと鳥肌が立ちます。可穂子の最後の行動は罪なのかどうか曖昧に思えますが、彼女が生きる道をつかみ取るためには必要なことだったのかもしれません。
2017/05/20
扉のこちら側
2018年171冊め。「誰かを羨んだり妬んだりせず真面目に働き直向きに人生を生きて行きたい」と口では言いながら、その歪んだ心を暴力で妻にぶつける夫。シェルターに逃げても逃げても痕跡を辿ってくるその執念が恐ろしい。農園に暮らす女性たちのそれぞれの事情も切ない。著者の作品は内容が暗くてもするすると読めてしまうさすがの筆力である。
2018/06/04
アッシュ姉
DVがこれほど恐ろしいものだとは分かっていなかった。さっさと別れればいいのにと思っていた己の浅はかさを思い知った。事はそう単純ではない。何しろ常識や話が通じない相手だ。被害は実家や勤務先にまで及ぶので、自分さえ我慢すればいいではすまない。逃げても逃げてもどこまでも執拗に追いかけてくる。いつまで怯えて暮らさなければならないのか、人生を取り戻せる日は来るのか。終わりがみえない恐怖と絶望。とても難しく根深い問題だということが痛いほど伝わってくる物語だった。深刻なテーマに真摯に向き合った著者の気概を感じる良作。
2017/07/06
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