律子慕情 (集英社文庫)
律子慕情 (集英社文庫) / 感想・レビュー
じいじ
律子の11~23歳までの多感な時期の成長と「愛」を描いた6連作の物語。私は【恋慕】と【慕情】の2篇が心に残りました。仕事も恋にも失敗して落込む29歳の叔父が、律子の家に居候することに…。優しく姪っ子の相手をしてくれる叔父さんが、律子はだんだん好きになります。でも、「叔父さんの本当に好きなのは…お母さんでは?」と確信するように…。心のうちの描写が見事に描かれています。さすが小池さんなので、男の私でも面白く読めましたが、女性の読み手ならもっと心に響くのだろうと思いました。
2022/09/17
ジンベエ親分
律子の小学6年生から23歳までの成長物語なのだが、普通と少し違うのは、律子に「死者が見える」能力があること。憧れていた叔父、自分を慕っていた少年、恋人の兄、様々な亡くなった人が律子の前に現れる。彼らは特に何かを語るわけではないが、律子には彼らの感情が丸ごと伝わる、という話。何話か読み進めると、今度は誰が死ぬのだろう…などとドキドキしながら読むのだが、意外な人が亡くなる話もあって、パターン化しない変化に富んだ短編集。複雑な感情が複雑なまま伝わる、不思議な小説。「天使」と「慕情」が特に泣ける。
2018/02/24
カブ
少女から大人へ。60年から70年代へ。連作短編集だが、律子の成長の物語としては一つのものになる。律子に縁の深い、しかも亡くなっている男性が別れを告げ、素直な心を伝えるところは美しく感動する。
2016/11/13
ぐうぐう
死者と感応する能力を持った少女・律子をめぐる連作集。小池真理子の小説にはめずらしい、SF仕立ての物語だ。そのせいか、律子の能力に頼っている感がどうしても拭えない。律子は死者を見ることで、その死者の想いを理解する。通常なら、その死者の想いを特殊な能力を用いず、物語の中に滲ませる努力を作家はするのだが、直接死者を登場させ、律子に悟らせることで、どうしても安易さが助長されてしまう。とはいえ、胸震わせられるエピソードも多く(特に「天使」は泣けてしまう)、侮れない。(つづく)
2017/02/21
coco夏ko10角
11歳~23歳の律子、6つのお話収録の連作短編集。律子と出会いそして世を去っていった人たち。三人目あたりで「自分が特別な感情を抱いた人は死んでしまうのでは…」と人と関わらないようになってもおかしくないけどそうはならない。死者も出てくるけどホラーな怖さはない。律子の能力が発動しているときの空気がいいしあたたかい。どの話もよかったし魅力ある男性ばかりだったが、特に律子‐叔父‐母の心理描写がうまい。
2023/04/09
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