ハコブネ (集英社文庫)
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ハコブネ (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
19歳の里帆、31歳の知佳子と椿の3人の女性が登場する。このうち、椿は概ね普通だが、とはいっても女性としての煩悶は抱えている。彼女は、他の2人に対するいわば鏡像としての役割を担っている。好きな男性とのセックスにおいても苦痛しか感じない里帆は、自らの性的アイデンティティを模索し続ける。また知佳子は、社会の共同幻想に入ることができず、自らをソル(太陽)とアース(地球)の運動の循環の中に同期させようとする。里帆と知佳子の抱える違和は、デフォルメされているとはいえ、ある意味では誰もが持つ世間と自分との違和だろう。
2018/08/14
ミカママ
前半を読んだところで、自らの「性」や「生」に疑問を持つ女性たちの物語かなぁと。前回読んだ『コンビニ人間』にしろ、村田さんは、マイノリティー(と呼んでいいかどうかは疑問)を描くことがお上手だし、それを使命と心がけてらっしゃるらしい。人は男と女のみにあらず、自らの立ち位置、欲望の対象、果ては欲望の存在すら疑問を持つ人たちがいるという事実。作者独特の丁寧な描写に、我らもうまく取り込まれるのだが、ラストの知佳子と「アース」との同期だけは、理解するにはわたしは凡人すぎるのだろうと思う。
2018/08/27
absinthe
沙耶香様が繰り返し書き続けてきた作品にこめられたテーマのエッセンスが凝縮された一冊。以前の作品では、暗示されたりほのめかされただけだったテーマがはっきりと主人公の口から語られる。自分を探すという事は、どこかの類型にはまることではない。LGBTなんだ、LGBTかくあるべし、と思い込んでしまえば結局は唯の類型の一つであり、普通の性と違いは無い。沙耶香様の語る本質はそれとは正反対のところにある。『星が吸う水』を更に発展させた展開。
2019/10/28
青蓮
自分の性に自信が持てない里帆の葛藤や苦しさにとても共感を覚えました。私自身も性については色々と思うことがあるので、知佳子が里帆にかけた言葉や椿の厳しい意見がぐっと胸に刺さりました。性はグラデーション。私も里帆もいつか「これが自分の性だ!」と選びとることができるといいな。椿は女性であることに固執しているけれど「性」に捕らわれている点では里帆と同じ。一方、知佳子は伊勢崎とは上手くいかなかったけれど「性」からは自由だった。それにしても不思議ちゃんな知佳子のものの見方がとてもユニーク。村田さんの才気を感じます。
2017/11/07
優希
赤裸々で独特の世界がありました。性と生き方の模索は女であることを強く意識しているが故のことなのでしょう。性は生だということなのではないかと。性別を脱ぎ捨てること、性別に縛られること。その海を渡る箱舟のように女性性の揺らぎが感じられます。ここまで強く自己意識がないのでイマイチ共感もできず、世界に浸ることもできませんでしたが。
2017/04/22
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