彼が通る不思議なコースを私も (集英社文庫)
彼が通る不思議なコースを私も (集英社文庫) / 感想・レビュー
じいじ
衝撃的場面で出会った二人、霧子と林太郎。運命的な再会が突然やってくる。ひょうひょうとマイペースな林太郎のキャラが好きですね。文中、そんな彼に反発を感じながらも、惹かれていく霧子の心情変化の描写が著者は上手く描いている、と思う。人間の運命、人の寿命、異性を愛するということは…の語りのくだりは、白石一文の真骨頂で読み応えがあった(本作は少し長めです)。「自分に絶望して死ぬのは駄目だけど、誰かのために死ぬのはあり…」には一考した(相手次第だ)。残された人生、自分はどう生きるのか?自問しながら読み終えた。
2017/05/29
ゴンゾウ@新潮部
2作目の白石作品。男性作家なのに女性視点で 恋愛を巧みに描いている。女性としてキャリアを全うするか夫のサポートをするか。女性ならとても迷う選択。そして夫の職業も学習障害児の療育という難しいもの。結末はあっけなく読みやすいのだかどっちつかず。もったいない。【ナツイチ 2017】
2018/05/30
りゅう☆
OL霧子は初めて小学教師林太郎を見た時、死神だと思った。偶然の再会で居酒屋のむーちゃんに結婚する人を連れて来ると言った林太郎。あれよあれよという間に結婚。結婚前に教師を退職後、体育教室開くも霧子は転勤。新婚なのに別居生活。本当に自分を愛してるのか、なぜ彼は結婚したのか不安に思う霧子。そんな林太郎には秘密があった。林太郎自身が掴み所のない不思議な存在。紆余曲折な人生なのに淡々と走馬燈のように駆け巡る。そして読み終わってタイトルのオチに気付く。そういうこと?!でも2人は何度出会ってもきっと幸せになれると思う。
2018/02/02
かみぶくろ
この筆者の作品は、基本的に「生真面目」「憂鬱」「スピリチュアル」の三次元座標で表現できると勝手に分析しているのだが、本作は(3,2,3)くらいの成熟したバランス型である。個人的には(5,5,1)くらいが好みなのだが、静かで客観的で地に足がついた、でもたまに感情的な文体と、この現代社会を生きて愛して死ぬということはどういうことなのか、という逃げ道のないテーマに向き合う姿勢は全作品に共通しているので、結局、座標抜きにしてこの筆者の作品が好きなのである。
2020/03/21
あも
大手家電メーカーに勤める霧子。友人の彼氏の自殺未遂現場に居合わせた青年・林太郎と偶然再会し、付き合いが始まる。林太郎の不思議な能力と学習障害や虐待の問題を絡めたストーリーは読み易く、先が気になり一気読み。しかし、著者の小説の価値は"面白さ"にはない。運命とは?生きるとは、死とは?人が人と出会う事の意味とは一体何か。そうした事々を読者は避けようもなく考えさせられる。そこにこそ意義があるのだろう。押しつけがましさが減り、答えを任せるようになった姿が好ましい。林太郎の言う生きる為に必要な事。機会があれば一読を。
2018/08/05
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