かたづの! (集英社文庫)
かたづの! (集英社文庫) / 感想・レビュー
ゴンゾウ@新潮部
江戸時代初期に南部藩に実在した清心尼の生涯を描いた物語。語り部の片角だけではなく河童、猿、座敷童、ペリカンが要所要所に登場し民話の里八戸、遠野らしいファンタジー色にあふれている。故郷、家を守るため一生涯をささげた清心尼の強さと清々しさに共感する。愛孫である妙が嫁ぐ際に「どんな苦難があっても決してあきらめないこと。」と語った言葉に彼女の苦難に満ちた生き様がうかがえる。【ナツイチ 2017】
2018/04/23
しいたけ
タイトルについている「!」。この本はもう「!」につきる。レビューに「!」をなるべく使わないと考えている私も、ここは思い切り使おうと思う。江戸時代唯一の女大名となった祢々に降りかかる数々の困難と哀しみ。「戦でいちばんたいせつなことは、やらないこと」。だが戦をやらないために、知恵に加えて身を引き裂くような痛みを引き受ける覚悟がいる。喋る羚羊の片角も、ペリカンも蛇も!何の違和感もなく物語にハイライトをつける。祢々の娘の悲恋も切なかったが、何より河童!!!河童の純情を笑わず泣く人と友達になりたい!私は笑ったけど!
2017/07/06
扉のこちら側
2018年156冊め。タイトルが何を表すのか気にしながら読んだがわりと冒頭で明らかになる。史実を基にしたフィクションで、さらに人ならざる者の活躍があるという当たりが新鮮だった。清心尼の生涯、時流に翻弄される人々が不憫に思え切なかった。南部藩に関してはこれまで読んできたことがなかったので、関心が湧いた。藩について次に読むのに適した本は何だろうか。
2018/05/22
naoっぴ
文庫を買っての再読。女性でありながら根城南部氏(八戸氏)の当主となった祢々(清心尼)の一代記。初読み時は歴史と民話との融合にわくわくしながら読んだけれど、再読では祢々の強靭な精神や心情が胸に迫り、頭から足先までどっぷり感情移入。誇りを叫んで戦えば死ぬのみ、ならば戦をせずに闘う道を模索する、という祢々の命がけの信条が、どこか現代の困迫した世界情勢にも重なり目頭が熱くなりました。中島さんの描く女性は品良く逞しく私にとって憧れと希望です。中でもこれはスケールの大きさもあり、三賞受賞も納得の傑作。面白かった!
2017/12/05
のぶ
大変に優れた時代小説だった。ユニークなのは物語をカモシカの片角に語らせている事。それと、この小説を面白くさせているのは、舞台を東北の弱小の藩にしているところ。前半では、遠く離れた地の秀吉ら有力大名の影響が描かれ、身内の不幸やら、世継ぎ問題を深刻な問題としてとらえていた。中盤以降で国替え問題が勃発する。豊穣な八戸から土地の荒れた遠野へ。後半は遠野城主になった女性、祢々の生き方が中心になるが、何とか良い土地にすべきか努力する姿が胸を打つ。不思議な余韻を残すファンタジックな一冊。
2017/08/03
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