Masato (集英社文庫)
Masato (集英社文庫) / 感想・レビュー
そる
期待せず読んだけど意外とおもしろく、良かった。異国に住むってのは言葉が通じない、子供には進路問題もある。大人の方が、特に家にいるお母さんの方が大変だったんだろうな。「真人を連れて日本に帰る!」って思っても仕方ない。でも真人の気持ちも分かる。この両親と真人、それぞれの心の葛藤がどこの気持ちも分かるし痛かった。「ぼくのお母さんにも、ジェイクやノアのお母さんみたいに、お母さんにしかできないなにかがあればいいのに。そしたらぼくみたいに仲間が見みつかって、たいていのどうしようもないことは、気にならなくなるのに。」
2019/06/15
じいじ
父親の転勤で、オーストラリアにやってきた真人くん一家の物語です。僕は、地元小学校の5年生に転入、お姉ちゃんは、翌年の高校受験に備えて日本人学校へ。初読み女流作家です。気取りのない粗削りな文章が親しみを感じます。登場人物の心理描写がきめ細やかです。どんどん現地に溶け込む真人と、なかなか日本の生活・文化から抜け出せない母親との対比が面白いです。伸び伸びと広大な大地で、成長していく真人くんがとても頼もしいです。終始一貫、とても読み心地の良い温かい小説でした。とくに、小中学生をお持ちのお母さまにお薦めの一冊です。
2018/08/06
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
父親の転勤でオーストラリアで暮らすことになった小学生の真人。慣れない英語、異なる習慣の中で戸惑い、時には辛い思いをしながらも、やがて自分の存在する場所を見つけ、逞しく成長していく。母親の描き方があまりにもステレオタイプなのだが、海外赴任した多くの母親が取る行動はああいうものなのだろう。「安藤真人」から「Matt Ando」へ。異国の地で日本人としてのアイデンティティを保ちながら、現地に溶け込むのはなかなか難しいことなのだ。前作では小説としての技巧を凝らし過ぎた感があったが本作は素直に楽しめた。★★★+
2018/01/25
はたっぴ
前作『さようなら、オレンジ』で心を掴まれた著者待望の二作目。父親の海外赴任で豪国へ移住した少年マサトの成長を、豪在住の著者が瑞々しいタッチで描いている。赴任中の友人から聞く数々の難題や立ちはだかる言葉の壁がここでもリアルに感じられて、家族一人一人の気持ち(ストレス)に同調しながら読み進めた。なかでもマサトが「自分の居場所がない」と悩みながらも引っ込み思案にならず、前へ前へと行動していく姿には誰もが勇気をもらうことだろう。多様な国籍の子供達との友情、大人達との交流(関係)も丁寧に描かれていて胸が熱くなった。
2017/11/29
Willie the Wildcat
シンガポール赴任時の次男が、真人に重ねる。目をパチパチ・・・。許される限り次男と時間を過ごし、興味を持ったクラブ活動も応援。次第に環境に馴染み、パチパチも消える。我が家の場合、奥様と私はUSで生活し日本経由でSG。海外生活が初めてであれば、本著家族のストレスも当然。それが我が家では次男だった。葛藤の中から辿り着く家族のあり方。(誤解を恐れず言えば)他所の家庭はどうでもいい。自分の家族が、如何に心身共に健康的に過ごせるか。それを物心両面で支えるのが親の仕事。苦闘した分、家族の絆は強くなったと信じたい。
2017/12/24
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