手のひらの幻獣 (集英社文庫)
手のひらの幻獣 (集英社文庫) / 感想・レビュー
rico
思うままに動物のイメージを出現させることができる「表出者」。能力を持つことへの葛藤と孤独、それを利用しようとする国家や企業。「超能力者物」の王道だ。「表出」時の手順、表出体との関連、実験の状況などの細かな描写が、荒唐無稽な物語を現実とつなぐ。あり得ない設定なのに、現実と地続きのリアルさはこの作家さんの独壇場。一方、これは主人公柚月の人生の物語でもある。仕事で経験を積み、若い後輩の力を生かすベテランらしい落着き。愛する人との関係。ストーリーとしてはこれで完結のようだけど、いくらでもスピンオフ作品作れそう。
2019/07/21
スカラベ
現実の日常世界はそのままに、ちょっとだけズレた奇想天外な出来事を起してしまう三崎亜紀ワールド。今回は出来事というよりは突飛な能力をもつ人々の物語。主人公の柚月は、自らの気配を消し、動物を「表出」する異能力を持つ。既読の『バスジャック』に収録された「動物園」の続編ということで、スーッと入り込めた。本書では、彼女が能力に目覚めたきっかけ(文庫のみ収録のボーナストラック)から、今回の事件のその後まで描かれる。会社間、国家レベルの戦いといった、やや広げた風呂敷が大きすぎる感もあるが、相変わらずの世界観は心地よい。
2018/05/19
rio
動物のイメージを現実に「表出する」異能力者の日野原柚月は、「表出者」の存在意義や力の意味を探求する連作短編集。非現実的な設定を、いかにも本当にあるかのように描く世界観の創り方が流石でした。「バスジャック」「廃墟建築士」に掲載された短編の続編にあたる本作ですが、内容をすっかり忘れていても充分に楽しめました。表出者の孤独感や閉塞感がよく表れていて、それに立ち向かう人々の姿が印象的です。未来に対して期待を持てる終わりが良かったです。
2018/08/02
fermata
三崎亜記さんの作品を読むのは6冊目! やっぱり三崎さんの描く世界が大好きだと実感した一冊でした。短編集『バスジャック』の中に収録されている「動物園」と同じ世界を描いている作品。心の中に作り出した動物のイメージをあやつる異能力をもつ日野原柚月の物語です。短編集の話よりもスケールが大きい物語となっていて、読みながらハラハラドキドキしました。特に遊園地の話が好きでした。三崎さんの描く世界はとても突飛な世界なのに、気づいたら物語に入りこんでいます。この感覚が好きなので、今後も三崎さんの作品を読み続けたいです。
2018/06/02
kei@名古屋
日野原さんという名前に既視感を感じる。動物園とか図書館の人でしたか。短編の人でしたがこの世界は好きです。きっと、となり町では戦争してるし、消える街はあるし、掃除はバトルしているでしょう。表出と掃除はどこかで似ている気がします。ただ、少年のくだりはちょっとあざとく感じるのは私が天邪鬼だからに違いない。そう言えば、研究室の子も動物園の女の子だよね?ワールドがしっかりしているからフィクションを受け入れやすく読みやすい。
2018/06/08
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