イタリアのしっぽ (集英社文庫)
イタリアのしっぽ (集英社文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
この本はエッセイなのでしょうね。ただ読んでいくと本当かなあ、という感じもして短編小説といわれても違和感がありません。15編の話が様々なペット(?)とのかかわりで楽しませてくれました。最初は犬ですが、猫はもとより猿や蛇、たこ、馬までも出てきます。それにしても知り合いが多くイタリアの庶民の生活などがよくわかります。日本だと余りこのような多様性は感じられないのかもしれません。
2019/11/05
ふう
ペットや植物と人との関わりを描いた、物語のようなエッセイが15話。1話読み終える度に飼い主たちのやるせない事情に考え込んでしまい、すぐに次の話へと入っていけず時間がかかってしまいました。ちゃんと生活していても、人と人が心の襞の深いところまで理解し合うのは難しい…。そんなとき、言葉が通じなくても、いえ、言葉が通じないからこそ、ペットの方がわかってくれそうな気持ちになるのでしょうか。そんな人々を深い眼差しで見つめ、寄り添うように穏やかに描いた味わいのある作品です。
2018/12/04
のぶ
内田洋子さんのエッセイを読むのはもう5冊目になるが、いつものように腰の据わった文章で、とても興味深く読む事ができた。内田さんは40年もの間イタリアに在住しているとの事で、ディープなイタリアを知る事が出来て嬉しい。ただ観光的な要素はほとんど入っていないので、読んでいる時の印象はやや硬い感じがしたが、今回は犬や猫等のペットや動物の話が中心になっているので、和らいだ雰囲気だった。これからも新刊が出たら読むだろうが、イタリアの話に内田さんは欠かせない。
2018/10/01
アン
著者が暮らすイタリアで出会った人々と動物との日常を綴った作品集。色々な動物が登場しますが、「月の光」「開いた穴」「嗅ぎ付ける」のラストシーンが魅力的です。初夏のミラノの植木市、華やかなヴェネツィアの町、表情豊かなサルデーニャ島等の風景描写も情感に溢れています。動物との関わりを通して見えてくる心模様や人間の愛おしさを伝えてくれている気がします。
2019/04/26
ユメ
動物と暮らす人々に焦点を当てたエッセイ。上質で情感溢れる内田さんの巧みな文章が浮き彫りにするのは、心の隙間を埋めるために動物を傍に置かずにはいられない人間の、どうしようもない孤独だ。そして内田さん自身も、犬を連れてミラノを歩く人である。「犬を連れているのは飼い主のようで、実は飼い犬が人を連れて導く。犬たちの嗅覚は、飼い主自身さえ知らない心の奥底を嗅ぎ取り、似た匂いのするほうへと引いていく」この言葉にどきっとせずにはいられなかったのは、私もまたこのエッセイの冷え冷えとした空気に惹かれたからなのだ。
2018/09/03
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