裸の華 (集英社文庫)
裸の華 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
直木賞作家として、今回もまずは練達の筆力である。物語の舞台に選ばれたのは札幌。これまでに読んだ釧路などと比べると北海道感はずっと薄い。もっとも、この内容からすれば、あまり強く地方色が出すわけにもいかず、結局のところ札幌というのはベストな選択であるようだ。お店のスタートに際して、都合よく人材が揃い過ぎるのにはリアリティに幾分か問題を感じなくはないが、これまたその後の展開を考えれば仕方ないところ。登場人物たちはそれぞれ、なかなかにに魅力的だが、主人公のノリカを差し置いて、浄土みのりの存在感が大きいか。
2023/04/03
さてさて
『みなそれぞれの事情を抱えてすすきのですれ違ってゆく。ここは交差点の街だ』という北国の街を舞台に、元ストリッパー・ノリカの挑戦が描かれたこの作品。そんな場に揃った瑞穂、みのり、そして竜崎。そんな彼らが『NORIKA』という『交差点』で出会い、それぞれの『夢』を追い求めて旅立っていくこの物語は、そこに人の再生を見る物語でもあったように思います。『銀座の宝石』と呼ばれた竜崎の作るカクテルの描写と、瑞穂とみのりのダンスの描写、そして元ストリッパー・ノリカの圧巻の演技の描写にすっかり魅了される傑作だと思いました。
2021/09/22
dr2006
桜木さんの作品を読むといつも、北海道への郷愁と凛とした女性の生き方に感銘を受ける。北海道は歴史が浅く他県から移住した人が多いせいか、定住や余所者に拘わらない。すすきのは様々な人を受入れ、そして通り過ぎていく交差点の様な街だ。そこで華々しく輝く彼らの一瞬を鋭く切り取る桜木さんの物語は素晴らしい。元ストリッパーのノリカは故郷の街でダンスシアターをオープンした。二人のダンサーとバーテンダーを雇う。桜木さんにしては順調な展開に実は、いつ落ちてしまうのかハラハラしてた。だからこそ希望に満ちたエンディングが感慨深い。
2021/09/03
naoっぴ
ストリッパーのノリカは、怪我を機に引退しダンスシアターの店をオープンする。店のダンサーやバーテンダーにはそれぞれの過去があり、自分を変えたい、超えたいと前向きに頑張る姿がとても清々しい。著者独特の湿度や泥臭さは感じさせつつも、本作は光に満ちた始まりの物語だ。「あなたにとって好きと楽しいは同じじゃないのね」とダンサーのみのりに問うノリカの言葉が心に残る。芸は技術だけでは寂しい。人を魅了し自分も楽しむことで光る。 物語に抑揚を抑えた情熱が散りばめられ堆積していく。足を踏みしめ、ためて、自分の一歩を踏み出す。
2019/06/06
納間田 圭
「ホテルローヤル」以来に読ませていただいた同著者話題の一冊。舞台はやっぱり…北海道。一世を風靡した場末ストリッパーの…脚の大怪我から引退をした後の話し。「死ぬまで踊りたいです」…彼女は原点の地に戻って来た。そこは札幌…少し歩くだけで耳に感覚なくなる"すすきの"の冬の0時過ぎ。お握り屋の暖簾をくぐりメニューを見ずに頼む…いつもの「たらこバターとチーズわかめのお握りと味噌汁」の温かさ。とても気になったのは…主人公の呼び名。現存しているあの有名女優と同じ名前にして大丈夫だったのだろうか?
2019/04/19
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