永遠の出口 (集英社文庫(日本))
永遠の出口 (集英社文庫(日本)) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
'99年~'02年にかけて「小説すばる」に連載されていた連作短篇集。紀子の小学校3年生から高校卒業までを自らが語った私的クロニクル。それは同時に'70年代~'80年代の日本の世相を回想するノスタルジックなものでもあった。この時代を生きた人たちにはそうした同時代を共に生きた共感性をも喚起するだろう。森絵都がうまいのは、小学生には小学生の、そして中学生や高校生にもその時期に特有の悩みや悲しみがあることを巧みに描き出す点だ。「愚にもつかないことに力を尽く」して…かくして青春時代は終わるのである。
2020/04/25
さてさて
『たとえばここに長々と続く道があり、その方々に幾つもの枝道が延びていたとする。まっすぐ本道を行くのか、枝道へ逸れるのか、その両者を分けるのはあくまで本人の意思である』。そう、人生とは選択の歴史です。この世に生まれた時から自分にも無数の選択肢がありました。『いろいろなものをあきらめた末、ようやくたどりついた永遠の出口』、人は年を取るにつれ、選択をすればするほどに、一方でその先の選択肢が少なくなっていきます。あの頃は良かったな、そう未来に感じるためにも一瞬一瞬をしっかり生きていきたい、そう感じた作品でした。
2021/10/10
しんたろー
森絵都さん2冊目は、紀子という少女の小3から高校卒業までを連作短編形式で、友達、学校、家庭、非行、恋愛などを瑞々しく描いている。まるで『ちびまる子ちゃん』を観ているかのような読み易さで、基本的にはクスクス、時折はシンミリ、そしてキュンとくる文章の巧さに何度も唸らされた。50過ぎのオジサンでは本当には理解できない事もあるのだろうが、紀子の言動に「こらこら」と親の気持ちになってしまったり「あったあった、わかるなぁ」と遠い昔を回顧した。きっと、女性には親近感が強く湧くと思うので、娘や妻に勧めたい作品になった。
2018/03/23
エドワード
小学生から高校生までの10年は、大人の10年とは比べものにならない。主人公の様々な経験をたどりながら、自分の来し方とも重ねながら読めた。主人公の世界が徐々に広がっていく過程を、お誕生会や、春休みの電車の旅や、レストランでのアルバイトを通じて描き出すのがうまい。森絵都さんは1968年生まれですが、きっとたのきんトリオとか大好き少女だったのでしょうね。「エースをねらえ!」「ガラスの仮面」「台風クラブ」「山下達郎」等、ちりばめられた時代の空気が懐かしく感じられて、素敵な作品でした。
2011/04/11
takaC
大好きなお話。自分は男だけど共感度が高く好感度も高い。紀子ちゃんちもウチからかなり近いしね。
2013/02/23
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