ファンタジスタ (集英社文庫)
ファンタジスタ (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題は"fantasia"の派生語ではあるのだが、「ファンタジー」とといった日本語の語感からは遠く、サッカー用語で「ストライカー選手に対する賛辞」といった意味であるらしい。この語を冠した表題作は、サッカーを世界の喩として捉えるのではなく、これを逆転させて世界をこそサッカーの喩として表現しようという試みである。その意味では実験的な小説なのだ。ただ、私にはその試みを諒解はするものの、成果は曖昧なままに終わったようにしか思えない。「砂の惑星」も、シュールレアリスティックではあるものの、今一歩突き抜けないようだ。
2017/04/03
長谷川透
土着色が強く、山間部の秘境を舞台にした「砂の惑星」、独裁者の誕生を臭わせる「ファンタジスタ」はガルシア=マルケスの二大代表作を彷彿とさせる(「ハイウェイ・スター」は完全な幻想文学のように思う)。確かに日本からラテン・アメリカに移民した者は多くいたし、向こうから日本に移住してくる外国人も多く、この国も<坩堝化>が始まっているのかもしれない。単なる手法の模倣だけではなく社会的な問題にも踏み込んでいる点は評価できるが、魔術的リアリズムというのはやはり、ラテン・アメリカの土着あって成功するのだと認識させられた。
2012/12/06
ネムル
もはや当たり前になってしまったポピュリズムを覆う空気を描いた表題作よりも、「砂の惑星」のが悪ふざけがはまっていて面白いように思う。
2024/06/26
kozu
どこか不思議で独特な3編。砂の惑星が好み。
2017/11/30
Mark.jr
ドミニカの日系移民をラテンアメリカ文学と共振する書き方で扱った「砂の惑星」。サッカーを題材にスポーツと社会・政治の関係性を描く表題作「ファンタジスタ」。デビューした頃の石井岳龍映画をなんとなく思い出させる「ハイウェイ・スター」。ほのめかすようなやり方ではなく、ポリティカルな要素とガッツリ組み合った短編郡は、村上龍作品と通ずるものがありますね。
2023/06/05
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