蛇にピアス (集英社文庫)
蛇にピアス (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2003年下半期芥川賞受賞作。なにしろ綿矢りさとの同時受賞だっただけに話題には事欠かなかっただろう。一般的なイメージで言えば、片や清純で瑞々しい才能、そしてこちらは型破りでダーティな、共に19歳の新鋭だったのだから。さて、本編『蛇にピアス』は「スプリットタン」などと冒頭からいきなり刺激的だ。アマとシバの2人の男性像も強烈だし、けっして路上で会いたくないようなタイプだ。シバにいたってはバイセクシュアルの刺青師なのだ。ただ、この作品が単なる風俗小説に終わっていないのは、主人公ルイに内在するピュアさゆえだろう。
2013/06/28
さてさて
『何も信じられない。何も感じられない。私が生きている事を実感出来るのは、痛みを感じている時だけだ』。朝の光景が描かれていてもそこに浮かび上がるのは光の当たらない薄暗く汚れた部屋の情景。そんなイメージが最初から最後まで一貫して続くおどろおどろしいこの作品。主人公ルイはそんな光の当たらない世界の中にそれでも必死に生きていました。『スプリットタン』というその映像を想像するだけで心の穏やかさが失われるこの作品。金原さんが描く生き生きとした19歳の主人公ルイの確かな存在感が故に心がすっかり囚われてしまう作品でした。
2022/03/12
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️⭐️すばる文学賞と芥川賞を一回り程前に受賞している本作。何となく最初の方は既読感がありましたが、もしかしたら金原さんは二度目かも知れません。薄い本なのですぐ読めます。少し雰囲気が村上龍さんの初期作品に似ている感じがしましたが、女性が書いている為かあの作品程嫌悪感を感じるしつこさは無く、若い人が書いた物特有な少しモヤモヤする感じはありますが、愉しめました。金原さん独自の世界観があるのでシンクロ可能な人にはオススメします。他の作品にも機会があれば手を伸ばしたいと思えました。
2016/04/28
ハッシー
【痛みだけがリアルを教えてくれる】圧倒的な物語を前にすると、僕は言葉を失う。どんな称賛も批判も、安っぽい言葉に思ってしまう。▶十代の少女のぐちゃぐちゃで滅茶苦茶で訳の分からない感情が鮮烈に描かれている。思春期には世の中の何もかもが嫌で嫌で仕方なく、周りの人間も自分も傷つけられずにはいられない衝動を持っている。▶物語の過激さに圧倒されたと同時に、主人公の激情にあまり共感が出来なくなってしまった。急速に失われていく自身の感性に少し寂しさも感じた。
2017/05/07
zero1
私はこの作品を認めない。自分の体をピアスなどで飾るのは存在証明ということで認めよう。問題なのは痛そうな内容なのだが、痛みを描けてないことにある。歯を折るほど殴った「傷つける」痛みは無いのか?芥川賞受賞作を再読。ルイはアマという男が舌の先を二つに割る「スプリッタン」に魅せられた。二人は同棲するが、アマはアブナイ男だった。その間、ルイは入れ墨師のシバと寝る。もちろん二人の性行為はアマには内緒。ある日、そのアマはバイトから帰ってこない。アマの本名だけでなく歳もバイト先も知らないルイ。これがリアルということ?
2019/02/07
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