サウンドトラック 下 (集英社文庫)
サウンドトラック 下 (集英社文庫) / 感想・レビュー
hit4papa
アンダーグラウンドの世界に身を投じた青年トウタ、高校生となり戦闘集団のリーダとなったヒツジコ、地下住民への攻撃を繰り返す鴉使のレニ。猛暑と暴動で沸騰する東京を舞台に、三者それぞれ物語が展開します。ヒツジコの、舞踏で人々の欲求を爆発させるという異才がユニークです。著者に特徴的なしつこいほどの細部にわたる都市と、そこに息づく人々、動物たちの現実離れした描写は、本作品にも見られます。ストーリーはあってなきようなものなので、マニアックな音楽にも似た古川日出男節が合う合わないで、本作品の評価は変わるでしょうね。
2018/01/25
さっとる◎
本書はフィクションである。冒頭に1ページ使ってデカデカと書かれている。途中何回かこれを見返してしまった(笑)吸引力と疾走感に溢れまくった東京崩壊小説。熱帯と化した東京でサウンドトラック・レスの世界を疾る生きる踊る撮る飛ぶ。聖戦だ。銃を武器にダンスを武器に映画を武器に。愛のために自分のために。再生された音楽のある世界で走り続けるトウタと、踊り続けるヒツジコ、写真銃を手に性別を自在に行き来するレニ、神となったクロイ。崩壊していく東京を後目にエネルギーに圧倒され再生の光に血がたぎる。日出男氏、好きだわー。
2016/01/08
とら
「疾走小説」―正にそれだった。最後は特に。書かれている事がリアルだから、ページの最初にでかでかと『本書はフィクションであり、実在の企業・組織などとは無関係であることをお断りします』と書かれているのにも関わらず、信じてしまう所だった。でも読み進めている内にこれは偽物なんだと思い始めたが、それでもリアル。最終的にはセカイ系と呼ばれる事になる一歩手前まで来た。まさかここに辿り着くとは。でも、舞台は実は変わっていない。変わらず”東京”なのだ。今自分は壮大な大冒険をした気分になっている。古川日出男はここから始まる。
2013/12/07
ナチュラ
危険な意味で「ヤバイ本」だ。 内容がどうというより、【魂】が揺さぶられる。 彼ら(彼女ら)のサウンドトラックに共鳴したら『破壊』へと導かれていくようだ。 「狂気」と「崩壊」、そして「再生」への叙情詩。
2014/09/03
hide
トウタとヒツジコ、レミの長い長いサマーヴァケーションの序曲。サウンドトラックレスの東京で鳴り響く沈黙。舞曲は舞踏の為のリズムを刻まない。沈黙が奏でるリズムの前奏曲。最後の一行からサウンドトラックが、再生の物語が始まる。音楽と小説の可能性を問いかける作品。
2019/06/23
感想・レビューをもっと見る