闇の左大臣―石上朝臣麻呂 (集英社文庫)
闇の左大臣―石上朝臣麻呂 (集英社文庫) / 感想・レビュー
榊原 香織
遺作。壬申の乱で大友皇子側で、最後までそばにいた人。知らない人過ぎる。 その後出世するのだけれど、武術の達人、て何の武術かよくわからない。
2024/03/08
巨峰
黒岩重吾の遺作は、僕も知らなかった地味な古代人が主人公。しかし、この人は当時被差別的な存在であった物部氏族の出でありながら、下級官人から、左大臣まで成り上がる。飛鳥から白鳳時代へ、時代背景も含めて、主人公のあからさまな出世欲も含めてかなり読ませる小説です。
2015/01/25
だまし売りNo
官吏が出世欲だけという姿勢になることは、麻呂個人の性格に加えて時代も影響している。この時代は日本史では氏族連合政権の大和朝廷から天皇中心の中央集権国家を目指したと説明される。教科書的な説明では物部氏や蘇我氏などの有力豪族が好き勝手に動くよりも、天皇中心の中央集権国家になることが良いことと思ってしまう。しかし、それによって天皇に権限が集中した結果、天皇の好き嫌いで官吏が登用される状況であり、顔色を窺って忖度し、足の引っ張りあいをする公務員組織になってしまった。
2022/09/20
再び読書
久々の黒岩氏の歴史小説。期待を裏切らない面白さです。壬申の乱から、天武から文武、元明の中、大友皇子の警護隊長から左大臣まで上り詰めた麻呂の、情報を武器に生き延びた辛抱強さに感心する。天武と持統の大津、草壁皇子を巡る葛藤、また、物部同士の雄君との勢力争いと、藤原不比等の台頭と、時代を繋いだ人物と感じる。あまり、歴史の教科書では語られない部分なので、最後まで面白く読みました。
2014/03/09
RASCAL
石上朝臣麻呂、あまり教科書とかでは聞かない名前だけど、壬申の乱の敗者の大友皇子の側近、警護隊長、しかも落魄の物部氏でありながら、天武・持統朝の左大臣にまで出世した謎の人物。実は大海人皇子の間者だったとか、そういう話かなと思ったら、違った。意外とまともな出世物語。天武朝が実力主義だったという事か。天武の死後は複雑。出世のためにポリシーなく持統、不比等側に付いたのは嫌な感じ。次は藤原不比等の天風の彩王を読みます。
2013/09/07
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