オリンピア ナチスの森で (集英社文庫)
オリンピア ナチスの森で (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
レニ・リーフェンシュタールが『民族の祭典』と『美の祭典』を撮った1936年のベルリン・オリンピック。それはまた、ヒトラーとナチスが総力を挙げ威信をかけたオリンピックだった。本書はその回顧的ドキュメンタリーである。沢木のペンは冴え渡り、荘厳な開会式の臨場感を映し出す。また、陸上、水上での当時の日本人選手たちを活写する。この大会はまたメディアの力をまざまざと知らしめるエポック・メイキングのそれでもあった。レニはまさにそれに相応しいし、「前畑ガンバレ!」が当時の日本人を熱狂させたのである。
2021/08/25
遥かなる想い
相変わらず、ノンフィクションでありながら著者の想いが強く感じられる、沢木 耕太郎らしい本。ベルリンオリンピックという60年も前の素材をとりあげて一体何を伝えようとしたのか…少なくとも私には、やがて第二次世界大戦へと突入しようという、その暗い予感の中で「日本」という国家のために戦う、日本のスポーツ選手たちのひたむきな気持ちが伝わってきて、何かひどく懐かしいような感じがした。マラソンで優勝した「孫基禎など、当時の民族問題もさりげなく盛り込まれている。
2010/05/19
goro@80.7
ナチス統治下でのベルリンオリンピックをドキュメンタリー映画から追って行く。評価の高い映画を見てみたい。そして「前畑ガンバレ」しか知らなかったけどその他の競技でも日本勢は活躍していた事を初めて知りました。その前畑さんにしても壮絶な練習と周囲からのプレッシャーの中、闘ったんだな。どのオリンピックでも一握りの勝者と大勢の敗者が生まれるわけだけど、それぞれの選手を追って深みのあるベルリンオリンピックを描き出す。次は「冠」を読みたいと思う。
2020/09/18
kinkin
レニ・リーフェンシュタールとの対談がメインかと思っていたが内容はベルリン・オリンピックに参加した選手についてがほとんど。ただそれがつまらないということではなく、当時のオリンピックについて知ることも多かった。太平洋戦争に突入する前の大会のため選手の多くが戦死したり戦争によって命を落としたそうだ。ベルリンに行くまでにシベリア鉄道で何日もかけて移動したり、水泳の選手が練習のときはふんどし姿だったこと、撮影も日が暮れると別の日に再現して撮っていたというような話が多く載っていた。★★★
2015/10/29
AICHAN
図書館本。1936年のベルリンオリンピックを演出・撮影し記録映画『オリンピア』を生み出したレニ・リーフェンシュタールにインタビューするとともに、同大会に参加した多くのアスリートたちの人生をたどるノンフィクション。丁寧に細心に正確に事実を考察する。盛り上がりはないが、淡々と考察していく力強い筆致に最後まで目が離せなかった。
2021/08/10
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