怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道 (集英社文庫)
怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
著者が得意とする未確認生物探検記。ただし、今回はインドへの果てしなく遠い道に挑戦する奮闘記。本書の中心にはいつも怪魚ウモッカがいるが、それは常に幻であり、そしてとうとう幻の憧憬のままに終わる。著者自身が半ばは本気で、また半ばは覚醒しつつ幻を求めるといういつもの様態だ。今回、読んでいて気が付いたのが、この人の比喩の巧みさ。これがあるために、わかりやすさと読者の共感とを獲得しているのだろう。なお、苦境の中にありながら、さらなる副産物として『神に頼って走れ!』までモノにするとは、転んでもただでは起きない人だ。
2015/08/24
読特
とあるUMAサイトで騒ぎになってる怪しい魚。体長2m、ウロコに覆われ、背中には鋭いトゲびっしり。ヒレが足のようで前後に4本。もし見つかれば、シーラカンス以上の世紀の大発見。懸賞付きの手配書を千枚。公式Tシャツも作り、現地語も習得。捕獲したときの輸送手段も手配済み。そして、実物大のトゲの模型もそろえた。準備万端。いざ出発、インドへ。空港到着、目指すはウモッカタウン。…残念ながら全く近づくことができない。過ごすことになったのはあまりにも想定外の場所。あきれさせるが、あきさせない。よくぞこれで一冊の本にした。
2024/05/09
ゆいまある
辺境ライターの高野さんが、40歳を迎える節目の年に、インドにいるウモッカという魚を探しに行く話。何ヶ月もかけてオリヤー語を修得し、オリジナルTシャツも作成するなど準備は万端。前回インド密入国で強制送還になったもののビザも下りた。しかし経由地が鬼門カルカッタ。着いたものの入国許可が出ず、何日も閉じ込められた挙句まさかの帰国。皆の期待を背負って出発しただけにカッコつかない高野さんが、荒れる荒れる!どうやってもうまく行かないとき、人はどう生きるのか、渾身のルポルタージュ。インド行ってないのに凄く読み応えがある。
2018/09/28
AICHAN
図書館本。「ウモッカ」とは何ぞや? その興味だけで借りた。探検したくてどうしようもない著者が、ある人がインドで見たという怪魚について調べる。シーラカンスのようにヒレが肉厚で、頭部はサメのようで、鱗はパイナップルのようで奇怪極まりない魚。見たという人が「モッカ」というハンドルネームでネットに公開していたので、それに「ウオ」をくっつけて「ウモッカ」。何と安直な命名か。著者は現地語を学び、モッカさんに会って話を聞き専門家を回って情報を集め、機材を揃え、いよいよインドへと旅立つ。ところが…。
2018/07/24
ホークス
読み進むうちにアレよアレよと意外な方向に行ってしまうが、それも又面白い。次々と現れる障害に右往左往する高野さんから目が離せない。ことの成否を分ける友人や奥さん等主要人物の動向にもドキドキするが、その他の関係者にもそれぞれ思いと事情がある(UMA研究家、学者、インド商人、漁師、税関)。国や地域や組織によって人の考え方と行動がなんと違うことか。しかし著者は怒ったり嘆いたりしつつも、どこかで「そんなもんだ」と腹をくくっており、すぐに次なるプランの検討にかかる。この逞しさにいつも感心させられ、又読みたくなる。
2015/11/01
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