二列目の人生 隠れた異才たち (集英社文庫)
二列目の人生 隠れた異才たち (集英社文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
ドイツ文学者の池内さんが、さまざまなミニコミ誌に発表された、一流ではないけれどなにかを成し遂げた市井の人々を取り上げての人物論です。私も知っている人は数名でしたがこのような人もいたのかという眼を開かれる思いでした。よくこのような人々を探しだしてこのような本にしてくれたと感じました。
2018/03/28
キムチ
落ち込んでる時にはこんな本、最適。等身大で生きてきた人の軌跡が、池内氏ならではのペンでステッチされる。余計な審判的感覚が省かれているせいか、モノクロ映像をみる感じ。奇人変人…画家によくあるんだなぁ。学者、文人にも。数日前、東大生に多いアスペルガーの記事があったのと併せ考えてみたりして。平成ともなると彼彼女らが色物と評されることこそ、社会の窮屈さを映すのかもとひとりごち。
2016/02/12
tomi
南方熊楠の陰にいた植物学者・大上宇市、棟方志功の陰にいた画家・篁牛人、宮沢賢治と似た境遇を辿った詩人・尾形亀之助、世界記録を古橋広之進に30分後に抜かれた橋爪四郎等々、才能がありながら第一線で活躍した著名人の陰でひっそりと生きた16人の小伝。官の立場で洋式の生活を崩さなかったラフカディオ・ハーンと対照的に、日本の一市井人になろうとしたモラエス。ハーンと、より日本を愛していた彼との知名度の差は複雑である。
2015/03/19
Pー
もう一人の棟方志功、もう一人の宮沢賢治、もう一人の小泉八雲、もう一人の上村松園、等々。同等の才能を持ち同じ時期に同じ場で力量を競いながら片方は文化勲章や評伝や全集に飾られ、もう一方は忘れ去られた、そんな隠れた異才たちを掘り起こした作品だ。豊かな才能を持ちながら貧しさに足をとられ、折角のチャンスに「中央」へと出そびれた人たち、世間に妥協するのをよしとせず、意固地になったり、時流に逆らったり、わざと無視したり、世にときめくより自分の世界を大切にした人々。二列目ってカッコイイな!。
2016/11/26
西澤 隆
題に惹かれて手に取ったが、読み始めてすぐに「魯山人など『一列目』の人のことをよく知ってるわけじゃないからしんどい読書になるかも」と感じることに。その認識が翻ったのは紹介されている本人のことを少しだけ知っていたモラエスのエピソードに遭遇してから。そこからは「二列目」を忘れて、有名ではないけれども素敵なひとたちの短い列伝として楽しんだ。そして「誰かの影」であるという視点を忘れて読めば紹介される人々はとても魅力的で、例えば篁牛人記念館や小野忠重版画館に行ってみたくなったりするのだ。著者は静かな紹介の達人だなあ。
2017/01/04
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