犬のしっぽを撫でながら (集英社文庫)
犬のしっぽを撫でながら (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
最初は『博士の愛した数式』をめぐる数学の話題。面白くて説得力があるものだから、そこで紹介されていた『数学者列伝』を購入することにした。続いては「書く」ことを軸とした随想。作家、小川洋子の創作方法や、彼女のフランス語訳を出しているアルルの出版社のことなど。そして、彼女の作家的原点ともいうべきアンネ・フランク。ここは特に深い共感から書かれている。そして、阪神タイガースと野球の話題。今までしんみりしていたのとは別人かと思うほどの熱狂。なにしろ相手チームに呪いまでかけるのだから。何をするのも一所懸命な人なのだ。
2013/05/16
ひろちゃん
エッセイ。作品の裏話などなど。「悲しみを受け入れる時、そっと見守る物語を書きたい。」「ストーリーではなく人との間に産まれる感情を書きたい」「数学は嫌いだが数学者は好き」など心に残る言葉が多数あった。すっかり大ファンです。
2015/12/22
metoo
しみじみと私は小川洋子が好きなんだなぁと。書名がいい。「犬のしっぽを撫でながら」なんと脱力したスッピンのような!ストーリーが決まっていないまま書き始めるという。シーンが浮かび思わぬところへ着地することもあるという。その方がいい作品に仕上がることが多いという。大好きな江夏豊の背番号は完全数の28。素数は孤独で割り切れることを拒む。懐かしい、「博士の愛した数式」だ。そして、小川洋子は野球が好き。野球中継が終わった後のラジオ放送に耳を傾けた子供時代、おんなじだ。悲しくないのに涙が溢れ、身勝手な親近感を抱く。
2016/06/21
hiro
面白い小説を読んだ後には、その作家のエッセイを読みたくなる。それは、何が好きで、どんな所で、どんな生活をしている人が、あの小説を書いたのかを知りたくなるためだ。例えば、しをんさんはBL漫画、桜庭さんは読書、万城目さんは渡辺篤史と、作家の好きなものが見えてくる。『博士の愛した数式』から、熱狂的な阪神ファンであり、シュールな小川洋子ワールドの作品から、妄想好きな人というのが、小川さんのイメージだったが、この本を読んで、町内会の当番で町内を集金にまわる、ごく普通のお母さんと、作家としての両面を見ることができた。
2012/06/14
財布にジャック
大好きな小川洋子さんのエッセイ集。「博士の愛した数式」や「アンネ・フランクの記憶」を読む前か読了直後に読んだら、よりいっそう楽しめたんじゃないかと後悔しました。小川さんが偶然手にしたという「天才の栄光と挫折・数学者列伝」という本は是非読んでみたいと思いました。そして「アンネ・フランクの記憶」も未読なので早く読まなくてはと焦り、課題図書を増やしてしまいました。本書のエッセイの最終話の「自信満々の人々」で登場する初老の男性のセリフにニンマリしてしまいました。
2010/09/19
感想・レビューをもっと見る