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ベーコン (集英社文庫)

ベーコン (集英社文庫)

ベーコン (集英社文庫)

作家
井上荒野
出版社
集英社
発売日
2009-06-26
ISBN
9784087464443
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ベーコン (集英社文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

タイトルの『ベーコン』(集中の1篇でもある)が示すように、収録された10の短篇のいずれにも料理の名前が冠されている。それが作中で結構な役割を果たすものもあれば、単にトッピング程度とその軽重はさまざま。また、すべてが「愛」を主題とした変奏曲である。しかも、変奏の手法はなかなかに手が込んでいて、一筋縄ではいかない。そもそも小説の構造そのものが揺蕩い、揺れ動きながら旋律を奏でていくのであるから。会話文もまた時に多義的な様相を呈したりもする。畢竟は、いわゆる大人の小説であり、登場する子どもたちの視点もそうだ。

2021/10/18

ミカママ

男女の性愛と食べ物を絡めた作品はたくさん読んできたけど、コレかなり好き。荒野さんの作品の中で一番好きかも。しょっぱなの『ほうとう』キッツいなぁ。不倫している彼の奥さんが、不妊治療の末、妊娠出産してしまう?自分には頑なに避妊具を使うのに?!「彼と自分が二人だけの惑星にいることはかわりない」と言い切り、彼にほうとうを作って食べさせる…他にもじれったい主人公ばかり、なんだけど、そういう曖昧さを持って男性に対峙できる彼女らが羨ましくもあり。もちろんどの食べ物も美味しそう、荒野さんはきっとお料理上手なのね。

2015/11/27

ケイ

食べることからは幸せを得たい。ここでの食事は、まがいもの…でしょ。調理している間に、いろんな想い〜恨みや妬みや切なさや勝ち誇り〜をすりこんで、ふりかけて。そんな食事は、たとえ出来上がりが美味しそうでもどれも口にしたくない。ムッとする。吐き気がする。嘘でごまかした暮らしで口にするものは、スタイルから入ったイタリアンや懐石のように満足なんかさせてはくれない、きっと。お父さんが出て行く、帰ってこない。する方も、させる方も、される方も、みな喉に何かを詰め込まれたよう。そこに美味しいものなんか、通るはずもない。

2017/06/04

遥かなる想い

男女の細やかな感情をリリカルに描いた短編集である。どの短編も どこか諦めにも似た気持ちを抱えた人たちが 登場し、著者らしい世界を構築する。間抜けな男たちと 冷静に 現実を見据える女たち…何気ない一言が 冷たく心を抉る…ひどく静かな現代の恋の物語だった。

2022/08/31

じいじ

 男女の「恋」を食べるものに絡めて描いた短篇集。⒑編どれも味のいい話で面白かった。不倫相手に妻が出産したことを告白、言われた女のベタベタ感のない爽やかさがいいです【ほうとう】。私は表題作の【ベーコン】が印象的。無駄な言葉は一切削ぎ落とした文章が好き、「お互いに魅かれ合い、いっそう魅かれ合うための時間を重ねてきた…」恋人同士。二人で初めて入った半地下の薄暗いバー。酒の肴は肉や魚介をいろいろなチップで燻した薫製。厚切りのベーコンで、オンザロックのウィスキーが飲みたくなった。官能度が薄目は井上荒野流なのかな? 

2016/11/26

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