コミュニティ (集英社文庫)
コミュニティ (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作を含む6つの短篇を収録。内訳は5つのホラー小説と、純愛小説が1つ。ホラー小説群は、いずれもホラーの質と趣を異にしていて実に変化に富んでいる。しかも、その小説としての本質がホラーにあるのではなく、人間たちの関係性の中にこそある。うまいなあ。そして大人の純愛小説ともいうべき「夜のジンファンデル」。「私は、怖いものがあるときにこそ、言ってほしかった」—なんとも残酷な響きだ。そして、互いにそれをできないからこその切なさが心に沁みる。篠田節子さんが長編のみならず、短篇小説の名手でもあることを痛感する1冊。
2017/11/15
ミカママ
またまた篠田さんの「うまさ」に引きずり込まれた短編集。どこにでもありそうな広義の「コミュニティ」内で、ありそうでなさそうな物語たち。相変わらず言葉の選び方がどれも秀逸。主人公たちにときに寄り添い、ときに腹を立てながら、一気に読了。吉田伸子さんのあとがき・解説は、わたしにはカッコつけすぎのキレイごと、なくてもよかった。
2018/01/28
じいじ
6短篇集。私は躊躇うことなく、大人の純愛を描いた【夜のジンファンデル】が好きで気に入りました。「旅行先で困ったら、電話してみたら…」と親友が気楽に教えてくれた単身赴任先(米・SF)の夫の電話番号。それが焼け棒杭に火をつけることに…? 気まずさとわだかまりを互いに隠しあう二人。最後の一歩が踏み出せないじれったい虚しい二人。切ない恋なのに清々しい読後感が残る小説だ。とにかく篠田さん巧い。30頁の短篇ではもったいない。長編でじっくり読んでみたい、大人の男と女を描いた傑作の恋愛小説です。
2017/11/18
アッシュ姉
ヒィィ…ヒェェ…ゾワワとブラックホラーな味わいが楽しめる短編のなか、唯一異なる雰囲気の「夜のジンファンデル」がお気に入り。理性で抑えた大人の恋。形にならなかった一夜を互いに秘め、時を経て告げられた想いが胸に迫り、無性に泣きたくなる。思いとどまった恋愛ほど心に永く留まるのかもしれない。同じく男女の話でありながら、まったく違う読み心地の「絆」、引きずり込まされそうな恐ろしさを感じた「恨み祓い師」も印象的。表題作はひたすらおぞましかった。む、無理。。
2017/09/07
ゆのん
初読みの作家さん。6編から成る短編。『夜のジンファンデル』がとっても良かった。上品な大人の恋愛という感じ。他にも小気味良くスッキリする話や、ホラー、切なく悲しい話など様々なジャンルの短編を堪能できた。表題作の『コミュニティ』は共感は出来ないが面白かった。長編も読んでみたくなる。
2018/09/30
感想・レビューをもっと見る