オートフィクション (集英社文庫)
オートフィクション (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
私の感覚からすれば、書かれたものは多かれ少なかれ、フィクションである。たとえそれがドキュメンタリーであったとしてもだ。事実は1つなどというが、それをどんな角度から見て、どのように語るかによって、全く違ったものになるだろう。故にすべてがフィクションなのである。したがって、あえてオートフィクションと名付けるのは何故かと思う。解説の山田詠美の評価は高いが、多分に同業者的である。私には、書きあぐねた揚げ句、苦し紛れに選ばれた手法であったように見える。それでは、金原ひとみは理解出来ないのかもしれないが。
2019/06/18
さてさて
『高原さんの自伝風に、小説を書いてもらえないか』という起点に始まるこの作品。そこには、今を生きるリンの姿から見ると驚きとも言える荒んだ過去のリンの姿が描かれていました。手首に傷を持ちながらも一方で『まあ、明日になったらどうにかなるだろう』とその時その時を生きてきたリンの過去の姿を遡るように描かれたこの作品。かっ飛んだ表現の頻出の一方で、深く内省するような表現の数々の対比が読者を困惑させるこの作品。凝った構成の一方で、あまりのかっ飛びぶりが若干の消化不良のままに終わってしまった、そんな風に感じた作品でした。
2022/03/16
ゆいまある
22歳、自立なんてしていない。こんなにも夫に依存。18歳、DJの恋人に依存。酒とクラブに依存。16歳、高校中退して男と同棲。パチンコにも依存。15歳、セックスと薬物に依存。自傷行為。妊娠中絶。過去に向かうほど緊張が増し、刺さる。自伝に見せかけた小説。構成は後に書かれたトリップトラップと共通だが、こちらはヒリヒリしたネガティブな思弁。そして気になっていた中学生時代が書かれる。かねてよりネグレクトされた過去を持つ人だと感じていたが、その片鱗が見える。繰り返しだと言わんばかりのグルーヴ。圧倒的孤独。
2022/06/24
tenori
熱量がすごすぎて理解が追いつかない感じ。嫌いな人は絶対に受けつけない。22歳の女性作家・リンの生きざまを15歳まで遡る。オートフィクション≒自伝的創作(作り話し)と解釈するなら、金原ひとみ自身を想像してしまうが、それほど単純ではないだろう。セックスと薬物に依存し、破滅と再生を繰り返す女性の一人語りは時に支離滅裂で時にピュアで、ひたすら異常なまでのオーラに圧倒される。その裏側で読者に冷静な眼差しを向ける金原ひとみが透けて見えるところが恐い。
2023/05/06
tomo*tin
なんだこれ超ウザいし完璧にイっちゃってるし馬鹿にも程がある。腹の中で片側の口角だけを釣り上げて笑いながら思う。どんだけ饒舌なんだよウザいんだよ超絶にウザい。それでもページを捲る手は止まらない。どこまで引きずり込むつもり?どこまで晒せば気がすむの?饒舌が乗り移り脳内はトランスで飲んでもいない酒の匂いに噎せ、熱いよ痛いよ怖いよと子供の様に泣き叫びたくなり、こっちとあっちがぐるぐるになる。気づけば笑みは消え、轟音響く更地で私はひとり。思いもよらぬ切なさのラッシュ。世界は眩くも遠いね。愛しければ愛しいほど。
2009/07/29
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