氷結の森 (集英社文庫)
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氷結の森 (集英社文庫) / 感想・レビュー
いつでも母さん
相剋、邂逅と来てやっと本作。矢一郎の存在が余りにも強い。こんなブレない漢がいたもんだなぁ。生き方が遠回りし、その都度逃げているのだが心が魂が求めている場所へ辿り着くのだ。樺太、シベリア・・凍てつく大地は何を、誰を受け入れるのか。国とか民族とかじゃなくマタギだった本能が愛する人と氷結の森に還るのだ。『森』三部作の中では少し落ちる気がするが(辛口御免)それでも読み始めると一気に読了させられるのは流石。厳しい寒さが背景なのだが、読み手の心を熱くする作品だった。
2015/11/18
みも
素晴らしい。ロシア革命や第一次世界大戦前夜を背景に、樺太やサハリンの社会情勢を描出する。そしてその推進力は、日露戦争で狙撃力を磨いた元軍人・柴田矢一郎の傑出した人間力。この魅力的な人物に魅了されながら、彼の誠実さに心を奪われる。漁師や樵の仕事ぶりもリアルに描かれていて興味深いが、最も没入させるのは凍結した海峡を犬橇で疾駆するシーン。その臨場感たるや「邂逅の森」のヒグマとの対峙シーンに勝るとも劣らない。「森」シリーズと銘打っているがそこに拘らず、スリリングなハードボイルド作品として読めばその面白さは格別だ。
2024/01/21
アッシュ姉
氷点下三十度を超える極寒の地での流浪の生活。平雇いの漁師や樵として、肉体を酷使して働くことで生きていることを実感する日々。前半は『山背郷』に通ずる雰囲気でとても好みで良かったが、中盤からガラッと変わりハードボイルド全開へ。嫌いじゃないし面白かったけど、森三部作としてマタギ小説を期待していたので、シリーズ完結編といわれると微妙。別タイトルの方が素直に楽しめたと思う。主人公は元マタギというより、元軍人といった方がしっくりくるし、秋田の阿仁出身なのに標準語。故郷の言葉は忘れたとは、ぬっしゃー如何すたぁー。
2016/08/03
takaC
文庫版のユーザー数比で、相剋:邂逅:氷結≒2:10:1なのは、3部の人気バラツキを如実に表しているよね。
2015/05/01
はつばあば
大正時代はまだ北海道もさほど開発されていなかっただろうに、北海道を飛び越え樺太の海に渡ったマタギ。海で鰊を漁する描写に「氷結の森」は海?と浅はかにも思ってしまった。西日本に在する者とはいえ、樺太・シベリアの事に関して全く無知であった事を恥じる。樺太の地にも秋田のマタギはいた。マタギであったからこそ極寒の樺太・シベリアで地で「人」として生きていけたのだろう。矢一郎の生き様が「森シリーズ」最後に相応しい。今なお北方領土問題が置き去りにされている。沖縄の基地問題もまだまだ。政府の対応は?国民をも置き忘れている。
2015/04/18
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