桐畑家の縁談 (集英社文庫)
桐畑家の縁談 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
まず「縁談」などという古風なタイトルがいい。そして「思春期に人が持つべきナルシシズムを、あらかじめ欠いて成長してしまった」(姉の露子による佳子評)主人公、佳子の造形がまたいい。万事に「普通の」露子がなんだか気の毒にさえなってくる。さらには物語の運びのテンポが実に絶妙である。エンディングでは、私たち読者もほのぼのとした雰囲気に包まれる。初出は『ウフ.』への連載らしく、連作短篇のような構成をとっている。したがって毎回小さなヤマ場があるのも楽しい。なんていうことのない小説。それはまさに小説らしい小説なのである。
2021/11/27
じいじ
私には二人の妹がいますが、同じ両親から生まれた姉妹なのに、容貌・性格はかなり違っています。今作の主人公・親元離れての姉妹も、結婚観などまったく違っています。或る日、妹から「私、結婚するから…」と言われ、のほほんと居候中の姉は、尻に火が付きます。そして、やおら懸命な職探し、結婚相手探しが始まります。同時に、晴れの結婚式に向かって、父親のうろたえぶりと母親の苛立ちは最高潮に…。この作品、登場人物たちは大真面目なのですが、読み手にはとても楽しい可笑しい物語です。中島さんのユーモアセンスに感謝・乾杯!
2022/11/09
いたろう
短編集「さようなら、コタツ」の中の1編、「私は彼らのやさしい声を聞く」の前日談、というか、本作は長編なので、物語としては、むしろ、こちらが本編? 仕事を辞め、妹の佳子の部屋に居候をしている露子は、熱心に仕事を探している訳でもなく、一応、研修医の恋人はいるが、結婚をしたい訳でもない。「私は彼らの~」では、妹の佳子が既に結婚しているが、本作では、佳子が台湾人の夫、ウー・ミンゾンと結婚に至るまでの話も。妹の佳子も、ウー・ミンゾンもなかなかいいキャラ。今度は、「私は彼らの~」の後日談というか、続編も読んでみたい。
2021/09/25
naoっぴ
桐畑家の姉妹露子と佳子の、結婚観や仕事観の違いと葛藤を描いた連作集。中島さん特有のおかしみある言い回しとまろやかな文章が好き。どこにでもある日常を切り取った話ですが、温かみのあるいい作品だと思います。私にも妹がいるので露子の気持ちがわかるなぁ。同じ環境に育って仲も良いけど、まったく別の人格だから好みも生活ペースも全然交わらない(笑) 違う人種のようなお互いを見ながら自らを振り返って学んだり、いまだにそんな日常の連続です。佳子に先を越されたけど、露子にも自分の道を見つけられる日がきますように。
2016/05/09
巨峰
いまいち文章がしっくりこない。まぁ、個人的感覚なんだとおもう。ざっくり言うと、妹にニートする姉27歳が、その妹が台湾人の男の事の結婚が決まって慌てる話。あの妹が・・・なんて感慨を覚えているけど、それだけでは終われないです、現実が・・・
2019/03/25
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