約束の地で (集英社文庫)
約束の地で (集英社文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
北の大地 北海道を舞台にした連作短編集である。不夜城シリーズとは異なる 作風で、雄大な自然と 家族の愛憎劇が 哀しく描かれる。 どの人物も心に抱えるやり場のない 怒りのようなものをぶつけ、破滅していく …ひどく冷たい怒りと哀しみのオンパレードだった。
2022/09/10
ちえ
作者の故郷、北海道日高。浦河―富川―苫小牧ー函館と太平洋沿岸を南下して少しずつ重なりながら繋がっている5つの短編。自然、風景の描写がとても美しい。最後の一編を読み、メビウスの輪のように不思議に連れ戻される感覚になった。函館以外は私にとって懐かしい土地でもあり入り込みながら、当時の事を思い出しながら読んだ。世界の終わりを作り出すために骨を埋める「世界のおわり」酷く凄惨なのに例えようもなく美しかった。
2020/05/18
Tetchy
相も変わらず人生の落伍者を取り揃えた作品集。そしてこれらの人々が各話の登場人物と直接的間接的に関わっているところに考えさせられる。つまりこれは普通の暮らしさえ望めない人が周りに必ず一人はいることを示唆しているように取れる。あなたの隣にいる人も何らかの問題を抱えて毎日を生きているのだというメッセージ、いや気付かない事実を教えられたようにも思える。本書のタイトルは『約束の地で』で発表は2007年。馳氏は北海道出身で作家デビューが98年。故郷に錦を飾るというが、馳氏は本書を以てそれを成したということだろうか?
2013/07/18
kawa
著者自らの出身地を舞台とするノワールの連作短編。私の日常、身近な横で生活している平凡と思える人々が次々と登場するのだが、北国の重く暗い季節と環境の中で、ちょっと歯車が狂うと非日常の世界に転落してしまう。そんな怖さをひしひしと感じさせられる。最終で登場する焼肉屋の「マコっちゃん」が第一話の主人公として登場する無限ループ、ここに嵌ったら怖い、でも憑かれてしまいそう。短編五作とも印象がくっきり残る著者のシンプルで卓越した表現力が凄い。
2020/04/10
takaya
うらぶれていく北海道の町を舞台にうらぶれていく人生を重ね合わせています。行きどまりの人生のブラックな短編集ですが、それぞれ甘さのない物語は迫力があり、引き込まれます。
2020/10/29
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