東京・地震・たんぽぽ (集英社文庫)
東京・地震・たんぽぽ (集英社文庫) / 感想・レビュー
dr2006
被害に遭った人々の視点から、東京で起きた大地震を描く連作短編集。勿論フィクションだが、普段、倫理社会に抑制されている人の有事における行動や心理の変化が興味深い。単行本の刊行は2007年なので、阪神の震災等を参考に時代背景や地域環境を見直しているようだが、その後2011年に起きた東日本大震災の混乱をリアルに言い当てているようで、読んでいてちょっと怖くなった(汗)今日は阪神の震災からちょうど23年、災害は忘れたころにやってくる。本作で良い意味で過去の地震の経験を思い出し、悼み、そして今後に備えたい。
2018/01/17
ichi-papa
東京に大地震が起きたら・・・という架空の話を中心に据えて、それに巻き込まれた人々の思い・行動を描いた短編集です。頷けるものも、ピンとこないものもありましたが、基本的には「昨日までの何もない日々が幸せだった」という感覚に溢れていました。今のこの何気ない日々を大切にしたいと思います。こういう災害が本当に起きないことを祈りたいです。
2018/08/16
巨峰
東日本大震災前から積読していたこの本をやっと読んだ。この状況下で誰に薦めることもできないが、豊島さんの誠実な描写がひかっていると思う。東京に起こった大震災の後、そこに暮らす人々を丁寧に描きました。
2011/08/10
takaC
単行本(単行本も読んだのは東日本大震災後だが)以来の再読。単行本をそのまま文庫化だと思う。大地震を経験していなくても人はきっとこういう話を書けてしまうのでしょうね。しかし、そこから先をどうしていくかに指南書はない。
2011/09/30
おぎわら
大地震を題材にした連作短編集。東京大震災を想定するが、本作で地震はあくまでもきっかけであり描かれるのはそこで炙り出される人の内面や満たされぬ思いなど、地震とは直接関係のない個々人の苦悩だ。辛い話も多く「くらやみ」などは鬼気迫る凄味がある。豊島ミホらしからぬ、登場人物に揺さぶりをかけ唐突に突放す書き方は地震で連絡のつかない焦燥感に似たものを感じさせる。それでも一部の話で後半救いを与えているのはやはり豊島ミホらしい。表題のたんぽぽが随所に現れ読者にほのかな希望を与える。震災の何年も前に書かれた点に注意が必要。
2017/06/03
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