谷崎潤一郎フェティシズム小説集 (集英社文庫)
谷崎潤一郎フェティシズム小説集 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
「フェティシズム小説集」と銘打たれたアンソロジー。編集者の手腕だろう。短篇集『刺青』よりはずっと売れそうだ。谷崎の新たな読者の獲得も期待できるだろう。谷崎にこのカヴァーはいかがなものかと思うが、まあ昨今のとんでもないのに比べれば、まだしも許容範囲か。内容的には、やはり「刺青」の出来が群を抜く。他の「悪魔」や「富美子の足」、「青い花」なども谷崎ならではのフェティシズム小説だ。こうしてみると、フェティッシュのエロスとタナトスは表裏一体、不即不離ということになりそうだ。少なくても谷崎においてはそうなのだろう。
2013/08/16
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
美しい女の肌によって妖しく生命を吹き込まれる女郎蜘蛛。土気色の病人を芋虫でも見る目で顔に脚を載せる女、恩寵を受ける男。愛する女を美しく着飾らせながら「あら、死んじゃったの?仕様がないわね」と捨て置かれることを夢想する。毒々しくて眉を顰めるような、なんだかその潔さに思わず笑ってしまいたくなるような。谷崎作品はいつも私の「文豪」のイメージを覆す。あやしいくせにからっとしてる谷崎のフェティシズム、割に好きです。川端作品より露骨な描写なのに川端の方がじっとりしめやかで、谷崎作品はあっけらかんとしてる感じ。
2019/04/15
masa@レビューお休み中
耽美、淫靡、卑猥…。どんな言葉を当てても谷崎文学に合致するとは思えない。めくるめく甘美な世界とも違う。惹かれて覗きたくなる世界とも違う。寧ろ、背徳的で薄暗くて人目には晒してはいけないような思いに駆られるような世界がここにはあるのだ。きっとある人たちにとっては甘く美しく映る世界なのであろう。けれども、僕には彼らの性癖を美しいとは思えなかった。それにも関わらず、私的とも思えるフェティシズムの物語に興味以上のなにかを抱いてしまうのだ。これは一体どういうことなのだろうか…。
2015/08/06
nobby
谷崎作品デビューにして目にしたのはFoot-Fetichismなる衝撃!少なくとも自分は足に魅惑は感じない(笑)それにしても大半の人々が羞恥や恥辱とみなす性癖や変態加減を、何と率直に耽美に描くのだろうか!遠慮なく自ら晒す短編6つの中で圧巻は「富美子の足」17歳の少女の足を、左右それぞれ評する美を姉妹と重ね、その肌の色からいちごミルクを想像などほぼ10頁に渡る描写には畏れ入る…「刺青」や「悪魔」でもドキドキ読ませてきてラスト身震いしての気持ち悪さもたまらない!それでも他人のフェチはあまり覗きたくないかなぁ…
2019/03/03
ehirano1
あわわわわ、凄いモノを読んでしまいました!!!「悪魔」「富美子の足」は当方には完全に異世界でした。しかし、こういうのが人間の本質を表していたりするので、一旦落ち着いてから再読したいと思います。
2018/03/01
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