アンダーリポート (集英社文庫)
アンダーリポート (集英社文庫) / 感想・レビュー
アマニョッキ
ずいぶん前に「身の上話」を読んで以来の佐藤正午さん二冊目。我ながら渋い作品を選んだと思う。小説の醸す雰囲気が村上春樹に少し似ている気がするけれど、こちらのほうが燻された感あり。グレーのフィルターかけたような。内容どうこうよりとにかく手練れやなというのが率直な感想。村上春樹がホームランバッターなら、佐藤さんはバント職人のような。地味だけどいい仕事してますね!見てる人は見てますよ!的な。二冊しか読んでない私が言うのはおかしいですが、賞が遅すぎたくらいじゃないですか?
2017/10/22
Kazuko Ohta
たとえば東野圭吾なら、イマイチだなと思いながら読んでいても500頁あっちゅうま。本作は380頁なのですが、意外と時間を要します。主人公は40代の男性。15年前に起きた殺人事件の第一発見者で、今さら自分の記憶を確かめ始める。いったい何がどうなっているのかわからないまま、淡々と話は進む。ドキドキわくわく白熱もしなければ、取り立てて驚きもないから、読むのに意外と時間は要するけれど、一旦入ると抜けられない。メビウスの輪のよう。あるいは縄跳びか。どこから入ってもOKだけど、入ったら飛び続けて、もう出られない。巧い。
2018/05/22
かわちゃん
☆☆☆☆ 個人的にツボの佐藤さんらしい本でしたが、これは好き嫌いわかれるタイプですね。孤独な主人公のモノローグを中心に、時間軸のランダムな展開や、謎めいたモチーフちりばめながらも、カタルシスは迎えないというあたりも、まさに佐藤印かと。多分作家として出来事そのものやトリックには興味がなく、物語やハードボイルド的な世界観に重きを置いているんだろうなと。このあたりがミステリーというジャンルなんだろうかと思わせるのでしょうか。個人的には好きな作家さんで、また手に取るのでしょう。
2017/05/14
タカギ
当代いちの作家は誰か、という質問に、読書の手練れたちが揃って名前をあげるのが佐藤正午。とにかくうまい、と。初読みです。主人公の「私」は検察事務官・小堀徹。彼は15年前、隣家の殺人事件の死体の第一発見者になっていた。時間は未解決のまま時効を迎えるが、殺された隣人の娘が事件のことを尋ねにやって来てから、小堀は事件のことを調べ始める。そして行き着いた衝撃的な真相。派手なアクションとかはなく、記憶を辿るだけなのだけど、淡々としているから余計に不気味で不安な感じが募る。傑作だと思う。でも私は小堀が嫌いだ。
2017/06/11
ふみ
一言で言えば煮えきらない男の煮えきらない話。これが存外おもしろい。結論はどこにも書いてない一人称小説。
2021/07/07
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