九つの、物語 (集英社文庫)
九つの、物語 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ウッディ
料理上手で、読書家、そして女の子に優しくモテる兄・禎文と妹・ゆきな。兄の作ってくれる料理を食べ、読書や人生談議をする仲のよい兄妹の穏やかな日常と思いきや、兄は二年前に死んでいたのだった。兄が死んだ原因、そして戻ってきた理由は?短編集かと思っていたら、9つの小説をモチーフにした長編でした。コミカルで爽やかなタッチで交わされる会話と香月君との初々しい恋、ゆきなの抱える重い過去にも関わらず優しく、軽やかに物語が展開します。適当に作った料理と同じように、自由に生きることの大切さを伝える兄の言葉が響きました。
2020/05/10
ユメ
本を読むこと、美味しいものを食べること、人を愛すること。ごく平凡だけれど、じんわりと幸福な日々。ーかりそめの幸せは、やがて終焉を迎える。「やさしい物語」そう謳われるこの物語が辿り着いた先は、本当に優しいのだろうか。読み終えた時は、なんて残酷なのだろうと思った。そこに許しはあるけれど救いはない、そしてこれからも永遠に来ない。けれど、一晩明けた今、何かを決定的に欠いた上でまだ歩いてゆけるのは、やはり優しさではないかと思う。人間の業は底が見えないぐらい深いけれど、生きているのはそれだけで尊いことだと教わった。
2015/03/24
ヒロ@いつも心に太陽を!
【文庫で再読】大好きな本のひとつ。お兄ちゃんがスプーンに料理を取り、差し出す。それを「わたし」が食べる。ろくに食べられない精神状態の妹のゆきながお兄ちゃんの手からならば食べられる、というあの場面がとても印象的。《食べてみないとわからないなんて、まるで人生みたいじゃないか。(略)しょせんはトマトスパゲティだから、なにかを入れすぎても、そこそこおいしくできるんだ。ほら、それもまた、人生みたいだろう》本を読むこと、恋をすること、食べること。私自身の生き方もこの3つで出来ているから余計に愛しく思える一冊。
2014/03/28
ミロリ
名言放出しまくりのお兄ちゃん。優しくて温かい物語。話ごとに文学作品とお兄ちゃんの美味しそうな手料理が登場し、一冊の本で色々なことが知れて得した気分。幽霊だと思ったらあまり良い気はしないけれど、このお兄ちゃんの幽霊は許せる。ささやかに見守るのではなく、ガッツリ姿を現して幽霊を認識した上で普通の生活に紛れ込んでるというのが新鮮で面白い。ゆきなの恋愛は純粋さが自然で好き。彼女が後悔しないためにお兄ちゃんがやって来たときはすごく嬉しかった。
2014/06/26
相田うえお
★★★★☆17010 たまにはなぞなぞで。足があって、暑いときはダラダラして、電話もok、誰とも話せ、誰からも見える、料理も作って食べて、体に触る事も出来る。デートもできるよ。さて、これな〜んだ!本作品に出てくる兄の幽霊なんです!読んでない方はこれが幽霊とはわからなかったでしょ?つまり普通の人と殆ど変わらないんですよ。こうなると幽霊の定義を考えてしまいますね。普通なら頭に白い三角あって空中に浮いてて壁を通っちゃうとかなんでしょうけど。。しかし、この作家さんはびっくり設定でも読ませてしまうのが上手いな〜。
2017/02/01
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