星へ落ちる (集英社文庫)
星へ落ちる (集英社文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『ねえどうして。どうして電話してくれないの?どうして私に会いに来てくれないの?』そんな狂おしい思いを着信のない携帯に向ける主人公の『私』。この作品には、そんな『私』を中心とした四人の男女の戸惑いと心の叫びが描かれていました。ひりひりするような展開に、どこか島本理生さんっぽい雰囲気を感じさせるこの作品。そんな中に『彼の恋人』を『僕』とした先に独特な世界観の物語を生み出していくこの作品。複雑な関係性を描く中に、一人の女と三人の男の心の機微を鮮明に映し取っていく金原ひとみさんらしい繊細な物語が描かれていました。
2024/07/17
ケイ
恋愛モノは苦手なのだが、タイトにひかれてよんでみた。オトコと男と女がいて、その中で一人のオトコが中心に居る時は、このパターンよりもオトコが女と一緒に住んでいて他の男と浮気する方が強烈だと思う。小説として読んでみたいと思う。この作品のパターンの浮気は想像しにくく、感情が入らず。他の人からの愛情に真摯に向きあえないなら、自分も愛する人からのまともな愛情は手に出来まい。本当はみんなが付き合いたいと思う私なのに、俺なのに、この人はなぜ?...、なんて思ってる人たちには、まともに向かい合う真心が欠けてる。
2019/01/11
ゆいまある
連続短編集。貧しい男と暮らしてた。でも作家デビューしたらインテリ男を好きになった。ここまではトリップトラップでも繰り返されているので、おそらく金原ひとみの実体験がベース。お互い恋人がいる身で恋に落ち、嫉妬に狂い、「彼(この作品には一度も固有名詞が出てこない)」以外の3人は自傷を繰り返す。自傷シーン激しめ。成功して幸せだったのかな。低学歴彼と暮らしていた頃のほうが不安でも苦しくもなかったよね。でもナルシストだから一生貧乏には戻れない。そんな気持ちが透けて見えて生き辛いのは自分だけじゃないと思えて安心できる。
2022/04/20
ちょこまーぶる
この分野の領域は不得意なだなぁ~と感じた一冊でした。いつもはあまり深く考えながら読んでないから、男女の濃密な人間関係の駆け引きや感情の起伏などを感んじながら読むことに不慣れだから、今一つ本の世界に入り込むことができませんでした。そして、読み進めて誰の考えが正しいのか?誰の判断が正しいのか?と考えていました。でも、間違っているかもしれないけど、男女の間でこれが正解ということもないのかなとも思いましたね。
2019/12/30
ころこ
連作短編なのを3作目へ来てから気付く。そして最初から読み直した。初出がバラバラで、単独で読めるのは固有名が無いからだ。「僕」という人称がゲイなことによって人間関係を分かり辛くしているが、同時にそのことによって固有性を見つけられている。相互の語り手から描写されることで、登場人物兼語り手の人物像が時間差でつくられていく仕掛けになっている。登場人物はメンヘラなのだが、その平板には辟易する。元彼だけがノーマルそうな鈍感な男で、その文章だけがしっかりしている。作者の描くアンバランスさの世界は独特だ。
2023/11/13
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