つるかめ助産院 (集英社文庫)
つるかめ助産院 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
読メの献本に応募して当選。もらったのが、この本です。いつまでも積読本にしておくと、当選しなかった人たちに申し訳ないので早々に読みました。本書は、南の島の助産院で主人公まりあが「産む」ことを通して生の意味をつかんでいく、いわばある種の成長物語である。舞台設定と助産婦の亀子の造形は、この物語に大きな成功をもたらしていると言えるだろう。ただし、個々の人物像の造形は、その概ねがステレオタイプの範疇に収まっており、自由に飛翔しえなかったのは残念である。エンディングも必然性に乏しく、いかにも甘過ぎだろう。
2012/10/12
さてさて
『つるかめ助産院を世界一快適にしたい』、それは『お母さん達のためっていうよりは、この子供達の未来のため』と語る先生。そんな先生が作っていく『つるかめ助産院』。生命の神秘に驚くとともに、その誕生を支える人々の優しさをとても感じたこの作品。新しい生命が誕生するたびに胸が熱くなり、思わず涙してしまったその読書。『生まれてきてくれて、どうもありがとう』、そして『私を母親に選んでくれてありがとう』という母親の不変の思い。この作品を超えて溢れ出てくるそのあたたかい感情に心から幸せを感じた、そんな素晴らしい作品でした。
2021/02/19
zero1
【育む人】と出産の奇跡。この作品を【荒唐無稽】と呼ぶか、生命誕生の物語として共感するか。読者は二つに分けられる。夫が失踪し、思い出のある南の島に来たまりあ。助産婦から妊娠だと告げられる。先生、パクチー嬢、艶子など登場人物たちには傷がある。それらの人たちが交わることで化学変化が生じる。助産院の開業経緯については「かもめ食堂」を思い出した。食べる場面は流石「食堂かたつむり」の作者。小川は出産経験なくこの作品を書いた。【妊婦はバカになれ】や時間を置いてへその緒を切るのは勉強になった。男こそ読むべきかもしれない。
2019/10/14
Atsushi
「捨て子」という悲しい生い立ちの主人公「まりあ」。夫に失踪され傷心のまま、訪れた南の島で妊娠が発覚。優しい周りの人たちに支えられ「つるかめ助産院」にて無事出産。里親の安西夫妻からの手紙に綴られた思いと届けられた産着は何とも切なかった。ラストで失踪していた夫が突然登場するのには大きな違和感あり。自分にも二人の子どもがいるが、無事産んでくれた家内に改めて感謝せねばと思った。
2017/06/29
SJW
夫が姿を消して、まりあは想い出の地の南の島を一人で訪ねる。そこで助産院長の鶴田亀子に偶然出会い、妊娠していることを告げられる。全てを亡くして絶望にくれるまりあを島の心の暖かい人たちに囲まれて、徐々に苦しみから幸せを感じて再生して行くドラマ。つるかめ先生はどうしても余貴美子の顔が浮かんでしまう。「半分、青い。」のせいかもしれない。養護施設で育ったまりあは里親ともうまくいかなかったが、妊娠して母親になることにより様々な人々の辛さや痛みを理解できるようになり、感謝と幸福を徐々に感じるようになる姿には(続く)
2018/08/21
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