傀儡 (集英社文庫)
傀儡 (集英社文庫) / 感想・レビュー
エドワード
もののけ姫の解説を書かれた網野善彦先生の「無縁・公界・楽」を読んだのは三十年以上前。大学のゼミだった。この作品は先生の斬新な中世史観を取り入れている。歴史は権力者と農民だけが生きたのではない。非人と呼ばれる、商人、山賊、修行者、遊女、清目、病人、芸能の民などの大勢の漂泊の民衆も必死で生きた。タクラマカン砂漠から来たサイラムが魅力的だ。彼を通じて<色即是空><躍念仏><悪人正機>を理解することが出来る。題名の傀儡はダブルミーニング。旅の芸能民と、日本史を貫く闇の権力。終幕に最も有名な今様が現れる所が上手い。
2015/02/03
tama
図書館閉架本 面白かったがなかなかに混み入った作りとなってて、友人のいうように「あっという間に読み終わり」はしなかった。五代目執権北条時頼の頃の鎌倉。親鸞は出るわ日蓮は出るわ。念仏宗がいて中央アジアの坊さんが、念仏踊り始めたり(一遍じゃないのか!?)、南無阿弥陀仏は方便であると言ってみたり、物凄い。なかなか死なない女は何度も刺されたり切られたりしながらも生命力も体力も抜群。書いた方も読む方も相当エネルギーが必要。でも面白かったから読み通せた。著者もっと生きて欲しかった。
2022/12/29
あいちょ。
かなりほったらかしてました。 改めて、坂東サンは凄いなと。 惜しいですね。
2014/04/17
kuppy
実際の権力者が天皇でなく上皇、将軍ではなく執権という構図は日本特有なものなのか?黒子(フィクサー)と傀儡が重なり合って恨みの連鎖という人間の業が展開していく。網野さんの中世史観に大きな影響を受けたようで、鎌倉の源氏から北条摂関家へと変わるうねりの中で生きる底辺の人々(傀儡師、非人、遊女、戦乱に放浪される農民など)が丁寧に描かれています。もう一つの大きな流れが仏教で、公家、武士層中心の禅宗、広く平民に広がった浄土宗や日蓮宗、踊り念仏というのも宗教の高揚感を感じる。
2021/03/01
りー
「この国には、裏に隠れよう、隠れようとする力があります。表で踊っているのは、みんな傀儡なんです。(本文より)」 物語の本筋が望洋として掴み所がなく、正直なところ、とても読みにくかった。登場人物は多いが、気持ちを重ねて読んでいけないのが辛い。最後、非人の女=いぬと、傀儡女=叉香のやり取りに、ほんの少しの光明を見る思い。叉香の吟う今様と千手丸の傀儡芸のコラボはちょっと見てみたいけれど、うっかり神域に踏み込みそう。最も俗なものこそ最上の聖に近い、ということは伝わった。
2018/03/08
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