葦と百合 (集英社文庫)
葦と百合 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヨコツ
入れ子の中に入れ子を配置する多重メタ構造で煙に巻き、不穏と平穏を行き来するリズムで酩酊させる。辻原登の『闇の奥』を思い起こさせるけれどこっちの方が先か。なんにせよ傑作。
2016/02/03
本木英朗
奥泉光はこの『葦と百合』が初の長編小説で、俺も1回目は2000年に読んだものである。その後、2回も読み返し今回が4回目となるのだが、さすがにちょっと今回は難しかったかなあ。2/3くらい進んだところからもうわかんなくなってしまって頭がもう混乱になった。それでも最後まで読んだけど、ちょっとなあ。まあ、いいさ。3年から5年の間にもう一度読んでやる。とりあえずは今回は以上です。
2019/02/03
てふてふこ
自分なりに推理しながら読んでたのですが、後半は翻弄されっぱなし。法月さんの解説にある、著者弁「おいそれと真相を明かすわけにはいかない・小説にとって本当の事以上に敵対的な概念は無い」で、モヤモヤのままでもいいや、と晴れた気持ちに。それにしても、息抜きの要素となった雛本教授の別荘の箇所がすごく面白かったです。
2014/02/21
三柴ゆよし
ミステリとは最も形式的な小説ジャンルで、つまりそれは最も制約が多いジャンルと言いかえることも出来るわけだが、そのためいざ形式としての底が抜けたときに生じる崩壊感は原語に尽せぬものがある。ディクスン・カー『火刑法廷』、ストリブリング「ベナレスへの道」などその好例というべきだが、上記二作の衝撃があたかも脳髄に直接鈍器を叩きこまれるがごときものであったのに対して、本作はまるで身体が臓器の側から反転するような、そんな無気味な読後感を与える。私の矮小な現実感覚は相当に深い部分から揺るがされた。
2011/10/23
乱読999+α
まんまと騙されたんだろう。何処までが現実で、何処からが幻想なのか?相互に矛盾する複数の現実が虚構の中に混在し、読み手を混乱させる。それが本作品の究極の目的なのか?作中に出てくる風景のように、霧深い山中、緑の魔境へ誘い出されて、置いてきぼりを喰らったようだった。しかし、なんと心地好く騙されたのだろう。そして、所々に出てくる雛本教授が「箸休め」となっており、重い多重構造のメタな作品も楽しく読まされた。流石に奧泉氏、面白かった。
2016/03/26
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